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ハリー・ポッターと純血の守護者

第25章 【蜘蛛の王】


「「ルーモス」」

 ハリーとクリスは同時に杖明かりをつけた。ちなみにロンの杖は紫色の煙が出ていたので使わないことに決めていた。
 生憎の空模様で、森の中に入ると真っ暗になってしまうので杖明かりだけが頼りだ。その時、2匹のクモが光を避けて木の陰に隠れていったのが見えた。3人はコクリとうなづくと、もっと森の奥へと入って行った。ファングが先頭をきって、匂いをかぎ分けながら少しづつ進んでいく。クリスは木の葉の揺れる音や小枝を踏む音に耳を傾けると同時に、1年前にみせた素精霊の声にも耳を傾けていた。もしこの森で、また異変が起こっているのだとしたら、何か反応があるはずだ。だが今のところ何の反応もない。
 何の変化もないままどのくらい歩いたのだろう、突然ハリーが声を上げた。

「待った、クモが小道からそれてる」
「行くしかないな。覚悟はいいか?ロン」
「もうとっくに諦めてるよ」
「じゃあ行こう」

 3人はクモの素早い動きを追って、茂みの中へと入って行った。鬱蒼と茂った木々と分厚い雲が太陽の光を完全にさえぎり、辺りは真っ暗になっている。それでも杖明かりを頼りになんとかクモの行く方向をたどっていくと、突然ファングが大きく吠えだした。

「何だ!?」
「……向こうで何かが動いてる」
「シッ!――何か大きいものだ」

 必死に耳を澄ませ、目を凝らし、何が襲ってくるのか待ち構えていると、普通の動物とは思えない何か別の生物が、右の方から木立の間をバキバ折りがら道をつけて進んでくる。こんなに重量のあるものは初めてだ。ゆっくりゆっくり近づいてくるそれを、杖明かりをさして待ち構えていると、突然大きな二つの目が眩しい光を放った。

「うわあああああ」

 腰を抜かしたロンが、叫び声を上げた。すると大きな二つの目の光がしだいに小さくなり、ロンの手前で止まった。杖明かりで照らしてみると、それはフロントガラスが割れ、辺りを暴れ柳にぶつけてぼこぼこになったウィーズリー家の車、フォースアングリアだった。

「見て!僕の家の車だ!暴れ柳に衝突した後、こんな所で野生化していたんだ!!」

 先ほどまでの恐怖はどこへやら、ロンは喜んで泥だらけの車体をなでた。しかし次の瞬間、また青ざめた顔でハリーの後ろを見て、口をパクパクさせていた。

「ハ……ハ……ハリー、君――」
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