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ハリー・ポッターと純血の守護者

第25章 【蜘蛛の王】


 しかし誰もが暗い空気を背負った中で、一人だけ光り輝いている生徒がいた。他の誰でもない、ドラコ・マルフォイだ。ドラコはまるで『ホグワーツ特別功労賞』を貰ったかのように、威張り腐って廊下を闊歩してしていた。
 そしてある魔法薬学の授業の日、グラップとゴイルに大きな声で吹聴していた。

「やっぱり、父上がダンブルドアなんかをのさばらせておくわけがないって分かっていたさ。次に校長になる奴はきっともっと良いやつが来るに決まっている。マクゴナガルもどうせ続かないだろう、単なる穴うめだから」

 それを耳にしたクリスは、調合していた手をピタリと止めた。今煎じているナメクジの内臓をドラコにぶっかければ、どれほどスカッとするだろう。しかしその時スネイプがサッと通り過ぎたので、タイミングを逸してしまった。

「先生!」

 ドラコの場違いなほど明るい声が、教室に響いた。長い付き合いで、これは絶対に頭にくることしか言わないだろうと言うのは目に見えていた。

「先生が校長職に志願なさってはどうです?」
「まあ、待ちたまえマルフォイ。ダンブルドアは停職中の身だ、間もなく復職なさるだろう」

 そう言いながら、スネイプの声は満更でもなさそうだった。クリスにはそれが余計に腹が立った。早くチャイムが鳴って早く授業が終わらないか、それだけを願っていた。

「しかし、『汚れた血』の連中がまだ荷物をまとめていなところを見ると驚くね。次のは死ぬ、5ガリオン賭けたって良い。グレンジャーじゃなかったのは残念だが――」

 その瞬間、誰よりも早くロンが椅子を乗り越え、ドラコに襲い掛かろうとした。それと同時にチャイムが鳴り、皆が慌ててカバンに荷物を詰め込んだので、幸いスネイプにばれずにすんだ。
 だがロンはハリー、シェーマス、ディーンに抑えつけられていると言うのに、拳を握ったまま怒りで震えていた。

「止めないでくれ」

 聞いたこともないような低い声で、ロンがうなった。こんなロンは見た事がない。クリスは少し背筋か寒くなった。

「杖なんていらない、直接殴ってやる」
「やれるもんならやってみろよウィーズリー」
「このッ……!!」
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