第23章 【最悪のバレンタイン】
しかしクリスの努力もむなしく、『愛のキューピット』はハリーの背中にしっかりとくっつくと、その場で歌を歌い始めた。
貴方の瞳は緑色 まるで緑のカエルのよう
貴方の髪は黒色 まるで黒いアゲハのよう
貴方は私の すてきな王子様
闇の帝王も屈服した強くて優しい王子様
ぷっと誰かが噴き出すと、それに続いて皆が大笑いを始めた。廊下は笑い声であふれかえっている。ハリーはどうしたかというと、勇敢にもみんなと同じように笑って見せた。隣りにいるドラコは、笑い過ぎて涙まで流している。怒ったクリスは勢いよく手をふり離した。
「ほら、みんな笑ってないで教室へいくんだ!ほら、君も、そこの君も!!」
笑い転げている生徒を、パーシーが冷静にも教室へ向かわせた。仮にも監督性のパーシーに言われ、生徒たちはちりじりになって教室へ向かっていった。しかしまだ廊下に残っている生徒もいる。ドラコもその1人だった。
「マルフォイ!君も教室へ行くんだ」
「まあ待てよ、ちょっとこれを読んでからね」
いつの間にか、ドラコの手にはリドルの日記が握られていた。ドラコはそれをハリーの日記だと思ってるらしかった。我が幼馴染ながらなんてめざとい奴。
「マルフォイ、それを返せ」
ハリーは静かに言った。するとドラコはニヤリと笑って、これ見よがしに日記を掲げて見せた。
「さぁて、ポッターはこれに何を書いているのかな?」
「それをハリーに渡すんだ!マルフォイ!」
パーシーが叫んだが、ドラコは聞く耳を持たない。監督性バッジを握りながらドラコに近づいて行ったパーシーだったが、ハリーの呪文の方が早かった。
「エクスペリアームズ!!」
ハリーが呪文を唱えると、ドラコの手からポーンと日記が離れ、ロンがそれを満面の笑みでナイスキャッチした。廊下で魔法を使ったことで、パーシーはグリフィンドールから5点引いたが、ハリーは何とも思ってなさそうだった。してやられたドラコは去り際、ジニーに向かって「ポッターは君のバレンタインが大層気に入らなかったみたいだぞ」と言った。