第23章 【最悪のバレンタイン】
皆とは逆に、フレッドとジョージなどは、ハリーの事を堂々と「真の後継者様だ」と言って、ハリーが歩いていく方へついて行くたび「控えよ、真の後継者様がお通りになるぞ」といって笑っていた。この馬鹿笑いはハリーの緊張ほぐしたが、逆にパーシーはそれを見るたび「ふざけるにもほどがあるぞ、ジニーがこれを見てどう思ってるんだ!!」と怒鳴った。ジニーを含め、1年生はいつ自分たちが襲われるのかビクビクしていた。
クリス以外の3人は、T・M・リドルの日記について興味を示していたが、クリスにはハリーの命を狙っている人間の方が気になった。この間などハリーを心配しすぎてトイレまでついて行ったら、ハリーをはじめ3人にカンカンに怒られた。
だんだんと暖かくなり、ホグワーツ城にも再び春の兆しが訪れ始めたころ、城内にもわずかに明るい空気が舞い戻ってきた。ジャスティンとほとんど首なしニックが襲われたのを最後に、誰も被害者は出ていなかった。しかも明るい話題はそれだけではない。マンドレイクが成長してきて、2度目の植え替えの時期を迎えることになった。――マンドレイクの植え替えと言えば、クリスには苦い思い出だが――そのあとは刈り取ってとろ火で煮ればマンドレイク薬の出来上がりらしい。それを飲めば石になった犠牲者全員が元に戻ると言うのだ。
それにこの1か月近くの間、ハリーにべっとりつきまとっていたが、危険な要素は何もなくクリスは何だか気が抜けてしまった。しかし左腕の痣は未だ濃いままだ。それに偶然にも一致する被害者とクリスの共通点。これは一体何を意味しているのか。やはり……自分が真の後継者なのだろうか?
「んー、わからん!」
「どこが分からないの?」
4人で魔法史のレポートをしている最中だったので、ハーマイオニーが問いかけてきた。宿題の最中全く別の事を考えていましたと言えば、ハーマイオニーに怒られると思ったので、適当なページを言ってその場は丸く収めた。ふさふさの髪が、隣りの席でペンを走らせるたび微かに揺れている。その度微かに香水の匂いが漂う。もし自分が真の後継者だったら、まず近場の人間を襲わないだろうか?ハーマイオニーをじっと見つめていたら、微かに左腕が痛んだ。