第23章 【最悪のバレンタイン】
「おお、そりゃすげえ」
「それだけじゃないのよ、もしこの本の使い方が分かれば、『秘密の部屋』がどこにあるのか、どうやって開けるのか、今回の『後継者』はだれなのか、その中に潜む生き物は何なんか全部わかるのよ!!」
しかしロンは考えているふりをしながら、ハーマイオニーの話しを根底から覆した。
「んー、確かに君の言う通りだ。でもその話には穴がある。そう、トロールのケツの穴より小さな穴が。その本には、ちっとも、何にも、これっぽちの情報さえ書かれていないんだ」
ロンにそう言われると、ハーマイオニーはムキになって杖を取り出した。
「透明インクかもしれないわ。――アバレシウム!」
しかし本は白紙のままだ。それ見ろと言わんばかりのロンの表情に、ハーマイオニーの意地に火が付いた。カバンの中を乱暴にあさると、中から真っ赤な消しゴムを取り出した。
「『現れ消しゴム』よ、ダイアゴン横丁で買ったの」
ハーマイオニーは必死になってページを消しゴムで消したが、日記にはアルファベットの「A」すら現れなかった。しかし謎はそれだけではなかった。ドビーが残した「ハリーは命を狙われている」と言う言葉。クリスにはその言葉の方が謎だった。だったらなぜ真の後継者は直接ハリーを狙わず、まるでハリーが真の後継者の様にふるまわらせているのだろう。去年のスネイプの様に、何かそうすれば得があるのだろうか?
「ハリー、本当に誰かに命を狙われている様子はないのか?」
「クリス、今回は本当に僕の命を狙っているのはいない。いるとすればスネイプぐらいだって」
「でも、ハリーだって純血ではないだろう?」
「そんなこと言ったらハーマイオニーはどうなるの?ハーマイオニーの方が100倍危険じゃないか」
こんなやり取りの繰り返しで、ハリーはあまり自分の身を案じていないようだった。それよりも、廊下で誰かとすれ違うたび、ヒソヒソ言われたり、指をさされれる方をずっと気にしていた。