第22章 【黒い本】
「さあ、楽しいゲームを始めよう!マートルに本をぶつけて遊ぼうじゃないか!!腹に命中すれば10点!胸に命中すれば30点!!頭に命中すればなんと50点!!!あはははは、な~んて楽しいゲームだ。これのどこが楽しいって言うのよ!!私、確かに死んでいるけど、ちゃんと感情はあるのよ!!」
点数を言うたび、マートルは握り拳でハリーを殴るので、ハリーは寒さとマートルのヒステリックな叫びに体を固まらせた。
「いったい誰が君に本を投げつけたんだい?」
固まっているハリーに代わって、ロンが訊ねた。そうするとマートルはまたしくしく泣き出して、いつものU字管の所に座った。
「分かんない……私がいつも通りここで死について考えていたの。……そしたら上から私の頭めがけて本が落っこちてきたの」
「それはどこにあるの?」
「そこよ……頭にきたから、私、流しだしてやったわ」
弱弱しく答えるマートルが指さす先には、小さな薄い本が落ちていた。びしょびしょにぬれて、もう二度と使えないであろう。ハリーがその本を拾おうとすると、ロンが慌ててそれを止めた。
「待った、やめた方が良いよ」
「なんで?」
「魔法界には見かけによらず危険なものがいっぱいあるんだ。――パパが話してくれたけど、目を焼いてしまう本とか、バカバカしい詩を一生口ずさんでいなければならなくなる本とか、読みだすと一生止められなくなってしまう本とか。とにかく、誰かがこんな所に捨てた本なんて危険すぎるよ」
「だけど、見てみないと危険かどうかも分からないだろう」
ハリーはひょいと拾うと、びしょびしょに濡れている本の表紙をめくった――が、何も起きない。しかし本の隅に、ありえない名前が書いてあった
『――T・M・リドル――』
「「ちょっと待った!!」」
クリスとロンの声が重なった。――リドル。地下に飾られていた肖像画が言っていた人物だ。秘密の部屋に一番近い人物だと。しかし50年前の人物の日記が、今なぜここに?