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ハリー・ポッターと純血の守護者

第22章 【黒い本】


「僕この人知ってるよ。T・M・リドル。50年前学校から特別功労賞を貰った人だ」
「ちょっと待て、ロン。どうしてその事を知っているんだ?」
「前に処罰を受けた時、こいつの盾を顔が映るほど磨かされたもん。クリスこそなんで知ってるの?」
「……我が家にも秘密の部屋があってね。そこに飾られていた肖像画から聞いたんだ。――トム・リドル、秘密の部屋に一番近い人物――だと」
「「なんだってッ!!?」」

 2人の声がマートルの声をかき消して、トイレ中に響いた。ハリーは手にしている本と、クリスの顔を交互に見ている。ロンは耳を真っ赤にして怒った。

「何でそんな重要な事、話してくれなかったんだよ!」
「話そうとしたさ!でもハーマイオニーはあんな状態だし、医務室で危険な話はできない!だからハーマイオニーの回復を待っていたんだ。私達の中で1番クレバーな彼女なくしてこの話をしても意味がない」
「僕らだけじゃ、リドルの謎を解けないって言うのかい!?」
「ああそうだ、彼女の頭脳なしでは秘密の部屋の謎は解けない」
「ああ、そうかい。そう言うんだったら、今ここでその謎を暴いてやるよ」

 ロンはハリーの手から本を奪い取ると、勢いよくページをめくった。だが何も起きないし、何も書いていない。その次のページも、その次のページも、その次のページも、その次のページも、シミひとつない。真っ白いページが続くばかりだ。

「ほらな、私が言ったとおりだ」
「クソッ!!」

 ロンは持っていた本を水浸しの床にたたきつけた。ハリーはそれを拾うと裏表紙を見た。

「この人、マグル出身だったみたいだ。ほら、裏に値札がある」
「何!?そんな訳ない、私の知っているトム・リドルはスリザリン寮のはずだ」
「もしかしたら、君の知っている人物とは違う人物かもしれない。ほら、トムなんてよくいる名前だし」
「はぁ、またふりだしか……でも、だったらこの本の持ち主はどうして本を捨てたりなんてしたんだろう」
「さあね。トイレに恨みでもあったんじゃない?」

 ロンがそう言うと、いつの間にかパイプの中に戻っていたマートルが、またゴボゴボと水をこぼした。
 フィルチに見つかる前に早く3階の廊下から退散しようと、3人はトイレを出た。しかしハリーが去り際、本をポケットに滑り込ませるのを、ロンとクリスの2人は見ていなかった。
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