第21章 【秘密の部屋】
「お嬢様、これは一体どういうことなのですか?今年はご主人様もお戻りにならないし、マルフォイ家で催されるクリスマスパーティもないというのに!!もしかしてご主人様はこのことをご存じないのですか?」
「あー、もう。相変わらずキンキンキンキンうるさい奴だな。自分の家だ!自分の家に好きな時に帰ってきて何が悪い」
疲れているうえにこのキンキン声は本当に頭にくる。クリスはトランクをチャンドラーにむかって放り投げると、とにかくお腹がすいた食卓へと向かった。その途中、一歩足を止めた。
「あー、それと私が返ってきたことを父様には言うなよ、言ったらその時は分かっているだろうな?」
「でも、それでは折角お嬢様がクリスマスに帰ってきたと言うのに……」
「仕事の虫の父様には娘とのクリスマスもクソも関係ないよ。とにかく言うな、分かったな」
それだけ言うと、本当に食卓へ向かった。適当な椅子に座り、チャンドラーが荷物をかたずけ食事の支度をするのを待っている。と、そのうち良い匂いがしてきた。列車内でろくに何も食べていなかったから、お腹がすいてしょうがない。出てきた料理を綺麗に食べ終わると、クリスは自分の部屋に戻った。
ベッドの上に身を投げ、天井を見上げる。本当に自分が真の後継者なのだろうか?実感は湧かないが、偶然とは言え証拠が幾つもある。だとしたら、このままホグワーツに戻らない方が賢明なのかもしれない。
ホグワーツに戻らない――……そのキーワードに、クリスはガバッと身を起こした。そうだ、ドビーが言っていた。ハリーはホグワーツに戻らない方が良いと。その方がハリーの身が安全だと。どうしてハリーなのだろう。普通はハーマイオニーや他のマグル生まれの方が安全なのに。
考えろ、考えるんだ。ハリーがホグワーツにいる以上、彼の身が危険にさらされていると言った。しかし襲われたのはミセス・ノリスに、コリン、ジャスティン、ほとんど首なしニック。時間帯はばらばら。生き物もゴーストも関係ない。そして以前も秘密の部屋は開かれている。その事を知っているのは、マルフォイ家の屋敷しもべ、ドビー。
まさか……クリスは恐る恐る左腕の痣を確認した。すると、明らかに前より濃くなってきている。
――ハリーの安全、そして左腕の痣
――1年前と当てはめるなら……『例のあの人』