第20章 【パーセルマウス】
そう言って、くすくす笑ってジャスティンの脇を通り過ぎた。これで少しは灸を据えてやったというところだ。クリスは少し胸のつかえが下りて談話室に向かっていると、今度は向こうから「ほとんど首なしニック」が現れた。
例の500回目の絶命日パーティーを断ってから、ニックとクリスの仲は殆ど良くなっていなかった。いや、全くと言っていいほどだ。
ニックはクリスに気づくと、挨拶もせず、わざとクリスの体を通り抜けてどこかへ行ってしまった。その瞬間、クリスはこの猛吹雪の中に放り出されたような気がするほど寒気が走った。体が冷え切ったクリスは急いで談話室に戻って暖炉の前を陣取った。
ロンとハーマイオニーはまだチェスに夢中みたいで、クリスが戻ってきたことにすら気づいていない。しばらく暖炉にあたっていたクリスだったが、一向に寒気が取れず、まだ次の授業まで時間があると言う事で、自分の部屋に戻ることにした。部屋にも暖炉はあるし、何しろふかふかのベッドがある。
ベッドに潜り込んだクリスは、温かさの所為かだんだん眠気が襲ってくるの感じた。このまま寝ては次の授業に遅刻すると思い、目覚ましをセットしてから眠りについた。
夢の中で、クリスは不思議な体験をした。暗い空間の中で、どこか聞いたことのある声がクリスに命令している。
『――殺せ、殺せ……この場に相応しくないものは、全員殺してしまえ』
(……そうだ、殺さなくては。この世に必要のないマグル生まれは、全員殺さなくては)
『その通りだ。この世に必要なのは、純潔の血のみ』
(純潔……そう、純潔の血。それ以外は殺す――)
「――違うッ!!」
自分の叫び声で、クリスは目を覚ました。