第20章 【パーセルマウス】
「サラザール・スリザリンが蛇と話せることで有名だったんだ。だから奴らの寮のシンボルマークはヘビだろう?それに、あの状況じゃ誰も君がジャスティンを助けたなんて思ってるやつはいなかったよ」
「なんで?だって僕の言うこと皆聞いてだろ?」
「だから、それが蛇語だったからいけないのよ。みんな理解できないし、みんな貴方がジャスティンに蛇をけしかけた様に見えたもの。ジャスティンが怒ったのも無理ないわ」
「どうして?だってあの場にはスリザリン寮の奴だって沢山いたじゃないか!」
「そこなんだよハリー。スリザリン寮でも、パーセルマウスの奴なんていやしない。きっとのこ学校では君1人くらいだよ。今度は学校中が君の事をスリザリンの曾々々々々孫だとかなんとかいいだすぞ」
ロンの言葉に、談話室が水を打った様にシーンと静まり返った。ハリーは自分がどんな境遇に置かれているのかやっと気づいたようで、明らかにショックを受けている。ハリーだけじゃない、ロンも、ハーマイオニーも暗い顔をしている。クリスはふっと息を吐いた。
「止めよう、こんな話。ハリーはグリフィンドールだし、パーセルタングだからと言って何か危険があるわけじゃないだろう」
スリザリンの曾々々々々孫はむしろ自分だと自嘲しながら、クリスは落ち込んでいるハリーの肩をたたいた。
「明日は薬草学がある。その時にジャスティンの誤解を解けばいいじゃないか」
「うん……そうだね、そうするよ」
「さあ、となれば私は医務室に行ってくるよ。あのパグ犬にやられた傷を治してもらって来なきゃな」
この白く美しい顔に傷が残ったら大変だと言うと、ハリーが力なく笑った。
今はこれでいい、ハリーにパーセルタングだと言う事がばれてしまったが、危害がないと言う事が分かれば、むしろ同じ力を持つものとして連帯感が生まれる。そこに畏怖の感情はない。まだ友達であり続けることが出来る。クリスにはそれが重要だった。
ロンやハーマイオニーを信じていないわけではないが、子供の頃ダイアゴン横丁で出会った親子が見せた視線を、クリスは忘れることが出来なかった。