第20章 【パーセルマウス】
クリスはハリーの首根っこを掴んだまま、無言で誰もいない教室までやってきた。そして教室の壁にハリーを押さえつけると、今度はその襟を掴んで問いただした。
「いったいいつから聞こえるようになったんだ?」
「く、苦しいよクリス」
「良いから黙って答えろ!いったいいつから蛇の声が聞こえるようになったんだ?」
「いつって……ホグワーツに来る前からだよ」
「……ホグワーツに……来る前から!?」
「うん、って言うか、君にも聞こえ――」
そこまで言って、クリスはハリーの口を押えた。これは家の人間と、ドラコしか知らない極秘の情報だ。グレイン家がスリザリンの血を引いていることも、クリスがパーセルマウスだと言う事も。特に純潔の家以外の人間には。またあの親子の様に、畏怖の目で見られるかと思うとクリスは怖くなった。
「いいか?私がパーセルマウスだと言う事は誰にも言うな。ロンにも、ハーマイオニーにもだ」
「ぱーせるまうす?」
「蛇と話ができる人間の事をそういう。ハリーも要らぬ誤解を受けたくなかったら黙っていることだ……といっても、もう遅いかもしれないけれどな」
「要らぬ誤解?」
「そのうち分かる。とにかく、今は談話室に戻ろう」
あんまり長居するとあやしまれる。クリスはハリーを連れて談話室に向かった。談話室では、すでにロンとハーマイオニーが2人を待っていた。ハリーの姿を見ると、ロンは飛び跳ねたように椅子から立ち上がった。
「2人とも、どこ行ってたんだよ」
「ああ、ちょっとな」
「そんな事よりハリー、貴方どうして自分がパーセルマウスだってこと話してくれなかったの?」
「それは……」
ハリーはチラリとクリスを見たが、クリスは小さく頷いただけだった。
「知らなかったんだ、蛇と話が出来るなんて。でもあの場にいたら、体が自然に動いて蛇に命令していたんだ。でもそのおかげでジャスティンは助かったんだし、良かったんだろ?」
「それが良くないんだよ」
ロンがため息まじりに暗い顔で言った。