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ハリー・ポッターと純血の守護者

第19章 【決闘クラブ】


「ミス・グレイン、君は――」
「先生、彼女とは私が組みます」
「ほう……それは良い。ではミス・グレインは彼女と組みたまえ」

 耳をつんざく甲高い声に、クリスはさび付いたロボットのように振り替えった。

「……パンジー・パーキンソン」
「久しぶりね、クリス。それとも私が相手じゃ荷が重いかしら?」
「何だと……」

 パグ犬のような顔をしたパンジーが、自信満々に近づいてきた。相手がハーマイオニーだったら負けても仕方ないと思ったが、相手がパンジーとなると話しは別だ。何としてでも勝たなければならない。クリスとパンジーは互いに距離をあけると、礼もせず杖をかまえた。

「それでは皆さん、私の合図でいきますよ。1、2、さ――」
「ディフィンド!」

 合図が終わる前に、パンジーは術をかけてきた。白い光線が真っ直ぐクリスの顔目がけて向かってきて、クリスは反射的に両腕で顔を隠した。ローブが裂ける感覚と、腕と頬に小さな刃物で切られた様な痛みがはしる。クリスは指先で頬を触ると、人差し指が真っ赤に染まっていた。

「貴様……よくも私の顔に傷をつけたな」
「あら、自慢の顔に傷がついちゃったわね。でも運が良かったわね、その程度で済んで」

 本当はもっと切り刻んでやりたかったけど、とパンジーが続けた。切られた髪の毛がパラパラと地面に落ちる。それを見て、クリスの中から手加減と言う言葉がどこかへ消え去った。腸が煮えくり返っているのに、どこか心は静寂を保っている。クリスは人差し指に着いた血を舌で舐めとった。

「良いですか?皆さん、私の指示通りに!!1、2、3、ですよ!!1――」
「ペトリフィカス・トタルス!!」

 今度はパンジーよりも早く呪文を唱えた。杖から放たれた閃光は真っ直ぐパンジーの体に直撃し、パンジーの体は一枚岩のように固まり、そのまま後ろにズシンと倒れた。その胸元を、クリスは足で踏みつけた。

「どうだパンジー?言葉も言えず、私に足蹴にされる気分は?」

 クリスは口の端をにやりと上げながら、ぐりぐりと足をねじった。パンジーは何か言いたそうに必死に睨みつけていたが、唇さえぴったりとくっ付いたままなので、何も言い返せない。その屈辱的な体勢に、クリスは満足そうに喉の奥で笑った。
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