第19章 【決闘クラブ】
ドラコと言えば、あれきり全く話をしていなかった。と言うより、クリスが一方的に無視し続けていた。喧嘩したり仲直りしたりしながらも12年間友だちを続けていたけれど、今回だけはついに終止符を打ったと言ってよかった。それくらい、クリスのドラコに対する感情は嫌悪の頂点を極めていた。
そんな事より、今はいつハーマイオニーがタイミングを出すのかが気がかりだった。手順としては、ハーマイオニーがハリーに合図を送ると同時に、ハリーは双子から買った「フィリバスターの長々花火」を誰かの大なべに投げ入れる。そして騒ぎが起きている間に、ハーマイオニーがスネイプの個人の薬棚に忍び込む、という作戦だった。
今か今かと待ち続けて、ようやく決行の時が来た。ハーマイオニーがチラリとハリーの方に目をやると、ハリーはサッと大鍋の陰に隠れた。それを見て、クリスは頭からローブを被り顔を隠し、右袖グッとめくった。
「君、何やってる――」
「シッ、黙って!」
その時、クラップの薬が大爆発を起こし、薬が教室中に飛び散った。薬はクリスの右腕にも飛び散り、痛みと同時に腕が丸太みたいにパンパンに膨れ上がった。
「何で全身隠さないんだよ!」
「4人の中で誰も犠牲者がでないなんておかしいだろ?だが顔だけは死守させて頂いた」
「はは……僕、君のそう言うところ嫌いじゃないかも……」
力無く笑うロンとは反対に、教室中は大騒ぎになっていた。目がカメレオンのように膨れ上がっている者。鼻が風船のように膨れ上がった者。頬がお餅の様に垂れ下がっている者、様々だ。皆薬を浴びて膨れ上がったところを押さえ、悲鳴を上げて右往左往している。
「静まれ!静まらんか!!」
スネイプが怒鳴り声を上げて生徒達を黙らせた。
「薬を浴びた者には『ぺしゃんこ薬』をやるから一列に並べ!!」
一番最初に飛び出たのは鼻が小さなメロンくらいに膨らんだ生徒だった。誰かと思ったらそれがドラコだったので、クリスはいい気味だと思った。クリスも丸太みたいになった腕を戻してもらおうと列に並んでいると、教室にハーマイオニーがするりと入ってくるのが見えた。ローブの前が少々膨れている。どうやら計画は成功したようだ。