第19章 【決闘クラブ】
「なあ、本当にやるのか?」
「当たり前でしょ、ここまで来て引き下がれないわ」
木曜日の魔法史の授業中、ポリジュース薬はほぼ作り終わり、後はバイコーンの角と毒ツルヘビの皮だけと言うところまで来た。問題は、それがスネイプ個人の薬棚にしかないという事だ。そしてこの授業が終われば、次はスリザリンと合同の魔法薬の授業となっている。
「何度も言っているだろう、ドラコは何も知らない。あいつは私が真の継承者だと思っているくらいだ。無駄骨で終わるぞ」
「そこよ、問題はそこだわ。どうしてマルフォイが貴女を真の継承者だと思っているのかよ。もしドビーの言う通り過去に秘密の部屋が開けられて、それが貴女のお父さんだとしたら、貴女は何か知らされているんでしょう?でも貴女は何も知らないし、逆にマルフォイ家の屋敷僕が知っているなんて変じゃない」
「それは……」
自分がスリザリンの血を引いているかもしれないから、だとは3人には言えなかった。子供の頃からあんなに信じていたドラコでさえ、それを理由に自分を疑ったのだ。3人に知られたら、犯人扱いは免れない。
それに、もしもドラコがうっかり口を滑らせたら――もう3人に合わせる顔がない。クリスはそれが怖かった。
「大丈夫よ、こっちの計画は完璧。後はタイミングだけ」
「それが怖いんだよ」
スネイプの授業で問題を起こすと言う事は、減点だけでは済まない事になる。もしかしたらグリフィンドール生全員連帯責任で罰則と言う可能性だってある。いや、それだけで済めば良いが……クリスは1年生の時、罰則で禁じられた森に入ったときの事を思い出した。
そしてついに魔法史の授業が終える鐘が鳴り、魔法薬の授業がやって来た。地下牢で行われる魔法薬の授業は太陽の光が入らず、松明の火だけが頼りだ。何処か陰湿な空気の漂う中、クリスは黙々と教科書通りに薬を仕上げていた。他の生徒はスネイプから薬が水っぽいだの、色が変色しているだの文句を言われる中、クリスだけが何も言われず、ただ横を通り過ぎるだけだった。
ドラコはクリス以上にスネイプのお気に入りで、ドラコがハリーやロン目掛けてふぐの目玉を投げつけていても、文句の1つも言わなかった。