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ハリー・ポッターと純血の守護者

第17章 【Memories】


 しかし、否が応にもその時は来てしまう。クリスは晩御飯を食べ終えた後、言われたとおり父親の待つ扉の前に立っていた。年期の入った重厚な扉が一層クリスの気をちぢこませる。蛇と話していたというだけで、何を怒られるのだろうかと、クリスの頭の中はすでに起こられることで一杯だった。
 何度も深呼吸をして気持ちを整えると、突貫する気持ちで扉を叩いた。

「入りなさい」
「しつれいします」

 6歳の子供には見た目も気分も重い扉を開けると、部屋の中心で父が使い魔の大ガラスヤナフとウルキを肩に乗せて立っていた。漆黒の黒髪に、漆黒の羽を持つ大ガラスがこれまたよく似合う。おそらくマグルが見てもこの人は魔法使いだと気づくだろうと、クリスはひそかに思った。

「今日チャンドラーから速達が届いてな。お前に……蛇の声が聞えたと」
「それが、何か悪い事なんでしょうか?」

 決まり悪そうに、蚊の鳴くような声でクリスが答えた。入り口から一歩入ったところで凍りづけになっているクリスに、父が指先でもっと近づくように合図した。
 ――くる、これからお説教が始まる。そう思ったクリスはもじもじと父親に近づいていった。

「初めに言っておこう、お前はサラザール・スリザリンの事を知っているか?」
「はい、ホグワーツを創った人の中の1人で……我が家の祖先だといわれている人です」
「そうだ、そして生粋の純血主義であり――パーセルマウスの力を持っていたといわれている」
「ぱーせる……まうす?」

 聴いたことのない単語に、クリスは思わず反覆した。それが今回の件と何の関わりがあるのだろう。もしやその力が自分にあることで、何かいけない事でもあるのだろうか。昼間のチャンドラーの驚き様を思い出し、クリスはごくりと生唾を飲んだ。だが、本当は正反対だった。

「そうだ、パーセル・タング。つまり蛇語を操る能力を持っているものをパーセル・マウスという。長い歴史の中で失われてしまった我が家の秘法を、お前は身につけているのだ。それだけではない、『名前を言ってはいけないあの人』、つまり闇の皇帝もお前と同じ力を持っている。ついにグレイン家に相応しい人間として選ばれたのだ、お前は」
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