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ハリー・ポッターと純血の守護者

第17章 【Memories】


 その言葉を聞いて、クリスは頭の上に大岩が降って来たような衝撃を受けた。純血主義を最初に唱えたサラザール・スリザリン。そして『例のあの人』と同じ能力。そんな能力、持って生まれたくなかった。誰かに嘘だと言って欲しかった。だがこの体に流れる血は、紛れも無く彼らと同じ血を引いている事を昼間、間違いなく経験している。

「いや、いやだ……いやだ、いやだ、いやだ!そんな血欲しくない」
「落ち着きなさい、クリス!いったい何がそんなに嫌だというのだ!」
「そんなに欲しいなら父様にあげます!私はこれ以上変な目で見られるのが嫌です!」

 ついにクリスの瞳から涙がぽろぽろと零れ落ちてきた。クラウスはどうしたら良いのか、困った様子でクリスの肩を握った。

「お願いします、父様……この事は誰にも言わないで。私……普通に暮らしたいだけなんです」
「分かっている。だがクリス、この家に生まれたからには代々使命というのものがある」
「――使命?」
「ああ、そうだ――」

 そう言ってクラウスはクリスの肩を離すと、ゆっくりと暖炉に近づいた。そして一呼吸おくと、両肩に乗っているヤナフとウルキに命令した。

「さあ、我が使い魔達よ、今こそその使命を果たせ」
『開け、秘密の扉よ。汝が我に正しき姿を現したまえ』

 するとどうだろう。たった今燃えていた暖炉の炎が消え、重い岩を動かす音が部屋全体に響き渡り、暖炉の中から地下へと通じる階段が現れたではないか。これを見て、クリスの涙は止まり、ただぽかんと口をあけて見ていた。

「今の言葉が聞えたか?」

 言葉の変わりに、クリスはコクンと首を縦に振った。昼間ドラコの持ってきたアルファルド同様、何の変哲も無く普通の言葉に聞こえる。父が杖灯りを付けると、両肩に止まっていた2匹のカラスは用済みとばかり父の肩を離れテーブルの上に並んで座った。

「これこそが我が家の秘密の部屋にして、ここを守り抜く事こそ我々に与えられた使命だ。さあクリス、手を――」

 恐る恐る父の手を握ると、父はゆっくりと階段を下りていった。階段は螺旋状の造りになっていて、どこまでも深く、まるで闇の底まで繋がっているのではないかと思うほど暗く、暗く、クリス達を導いていった。
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