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ハリー・ポッターと純血の守護者

第2章 【沈む太陽】


「えっと、その……買い物の前に、寄らなければならないところがあって……そ、そうマダム・マルキンの店でローブを新調しようと思っていたんですよ。でもそれだとお待たせする事になるので申し訳なくて」
「なに、気にする事はない。それくらいなら付き合おう。構わぬな、ドラコ」
「ええ勿論ですよ父上」
「いいえっ、おじ様達をつき合わせるのも悪いので私だけ先に行ってます。ですから父様、銀行の鍵を渡してもらえますか?」

 ドラコが言い終わるか否かに、慌ててクリスが遮った。
 クリスが期待のこもった瞳で父へ視線を送ると、知ってか知らずかクラウスは何も言わずに鍵を取に行ってくれた。こういう時ばかりは、余計な口を出さないこの性格に感謝したい。

「番号は知っているな?」
「はい、前にも使った事はありますから。では――」
「ちょっと待ったクリス、僕も一緒に行こう。女性を……特に許婚を一人で出歩かせるわけにはいかないからな」

 クリスがそそくさと暖炉の中に『煙突飛行粉』を一掴みふりまくと、ドラコがすかさず声を掛けてきた。奴の魂胆は分かっている。すまし顔でそれらしい理由をつけてはいるが、ただ単に機嫌の悪い父親と一緒にいて、また小言を聞かされたくないだけだ。しかしクリスにもその気持ちは分かるので、「許婚」という言葉に眉根を寄せながらも了承してやった。

「分かった、いいよ」
「よし……それじゃあ父上、おじ様、行ってまいります」
「ドラコ、30分程で私達の用事も終わるが、何があるとも知れん。クリスのことはお前に任せたぞ」
「十分承知しております。では――ダイアゴン横丁」

 少しでも父親からの印象を良くしたいドラコは、うやうやしくクリスの手をとると、エメラルド・グリーンの炎の中へと消えていった。
 暖かいような少しくすぐったいような踊る炎の感覚を楽しむ僅かな間に、2人の体はスコットランドから遠くはなれたロンドンの古臭いパブ、漏れ鍋へ到着した。
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