第16章 【小さな大冒険】
クリスの心は興奮でいっぱいだった。この子達は違う、皆が皆クリスを一個人の人間として扱ってくれる。純血主義の家系でもなく、スリザリンの血を引いているからでもなく、この容姿ですら気にしない、唯の「クリス・グレイン」として見てくれる。それがクリスにとって何事にも変えがたい喜びだった。
「それじゃいくよ、じゃ~んけ~ん」
「ぽいっ!――あっ、勝った!」
「ちぇっ、けっきょくぼくが鬼か……」
「よし!それじゃあはじめるぞーー!!!」
ロイドの合図をきっかけに、子供たちはまるでクモの子を散らすようにバラバラと公園を走り回った。足の遅いクリスは皆より1歩出遅れていたが、そんな事は気にもならなかった。魔法界に友達と呼べるのはドラコしかおらず、毎日の過ごし方といえばドラコをからかって遊ぶか、1人で本を読む程度のクリスにとって、これだけ大人数で、しかも心から遊べるなんてまるで夢のようだ。
こんな時間がいつまでも続いてほしい。そう願いながら、クリスはかくれんぼに夢中になった。最初にジョニーが見つかり、次にやったときはコレットが鬼になった。それから何度か同じようにかくれんぼを繰り返したが、クリスが鬼になることは1度も無かった。
「おどろいた、クリスってかくれんぼ上手なんだね」
思えばこのころから、もうクリスの位置探知能力は目覚めていたのだろう。鬼が近くによると、死角に入りこっそり場所を変える。クリスにとっては自然な事が、皆には驚きの対象になっていた。
「いつも誰かとかくれんぼしてあそんでるの?」
「ううん、いつもは本ばっかりよんでるよ」
「クリスってどこに住んでるの?」
「ねえ、クリスって学校は?どこにいってるの?」
時間が経つにつれ、だんだんと慣れていった皆がクリスに質問をし始めた。好奇心に目を輝かせ、クリスを取り囲んでいった。