第15章 【ゴムゴムの腕】
鼻息荒くまくし立てられたクリス達全員は、残念そうな笑みを浮かべて手を振るハリーの姿を振り返りながらトボトボと医務室を後にした。行き場を失ったクリス達一行が談話室に戻ると、そこでは残った生徒たちによって既に盛大な祝賀会が繰り広げられていた。憎きスリザリンに勝った事で、皆暴れブラッジャーの謎など頭からすっ飛んでしまったらしい。
パーティに参加しようとするロンの耳を引っ張って、クリス達は少し外れたソファーに座った。
「それで、これからどうする」
「どうするって、決まってるわ。ポリジュース薬を完成させて、マルフォイから情報を聞き出すのよ」
「それってスリザリンの連中の一部が入った薬だろ?出来れば遠慮願いたいんだけど」
「我まま言わないの、もう決めた事なんだから。それよりクリス、貴女はどうする?まだ一人で調査を続けるの?」
「そうだな。今回の事もドラコが係わっているとは思いにくいし、私は私で調査するよ」
「……そう、分かったわ。でも何かあったら直ぐに連絡を頂戴」
少し残念そうにため息をつくハーマイオニーに、珍しくロンが助言をした。
「クリスは根っからの純潔なんだから、危ない事もないし、マルフォイからも警戒されてない。下手したら一人で動いたほうが都合が良いかもよ」
「そう、よね。むしろ危ないのは私たちの方よね」
ロンとハーマイオニーの言葉に、クリスは心臓がドキリとした。純血主義の家に生まれた自分と、マグルびいきの家に生まれたロン、例のあの人を倒したハリーに、マグル出身のハーマイオニー。どう考えても、安全な位置にいるのは自分だけだ。本当にこのまま単独行動を続けていいのだろうか。クリスは考えて背筋がぞくりとした。
――もしかしたら、3人の内の誰かが――
いや、それだけじゃない。もしこれ以上誰かが何かの被害に遭えば、クリスは自分を許せないだろう。しかし、このままハリー達といれば、いずれグレイン家がスリザリンの末裔だと言われている事がばれてしまう。過去の経験から、それだけは避けたかった。しかし……クリスはもう、どちらが正しいのか分からなくなっていた。