第14章 【別れ道】
そうして向かった先は談話室でも空き教室でもなく、『嘆きのマートル』トイレだった。クリスはこれに散々文句を言ったが、全てハーマイオニーに却下された。ハーマイオニー曰く「まともな神経の人はここには来ない、だからここがどこよりも安全だ」というものだった。
『嘆きのマートル』はいつもの個室でめそめそ泣きながら何やら呟いていたが、クリス達はそれを無視し、マートルもこちらを無視していた。
ハーマイオニーが『最も強力な魔法薬』を開くと、ハリーもロンもそれを覗き込むような体勢をとったが、クリスは1人離れたところから腕組みをして見つめていた。本はそれこそ実家の書庫に行けば手に入りそうな、陰鬱で残忍な挿絵が施されている曰くつきの本だった。苦労せずともクリスマスまで待てば手に入りそうな本に、3人はのめり込む様にページをめくっていた。
「あったわ、ポリジュース薬!」
ハーマイオニーの声に、クリスはその場から本を覗き込んだ。とても複雑な魔法薬らしく、見開いたページだけでは足りず何ページにもわたって材料とつくり方が載っている。ハーマイオニーが字を指で追いながら必要な材料をあげていったが、途中でうっと息を詰まらせた。
「バイコーンの角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切り、こんなのどこで手に入れたら良いか……それに、当然だけど変身したい相手の一部」
「ななななんだって?!」
ロンは驚いて声を張り上げた。当たり前だ、ロンからすればスリザリン生と同じ空気すら吸っていたくないのに、相手の一部を材料として使うだなんて。それならまだフィルチからネチネチと因縁をつけられる方がマシだ。
「冗談じゃないよ、まさかクラップの足の爪でも飲めっていうのかい?ぼく、そんなの絶対お断りだね」
ロンがクラップ足の爪を飲む自分を想像して、「うげぇ」っと舌を出して抵抗姿勢を見せた。確かに作戦の為とはいえ、誰だってクラップやゴイルの足の爪が入った薬なんて飲みたくない。あのお騒がせ大好きジョージっとフレッドだってきっと嫌がる。
「私も同感だな。どうせドラコ相手じゃ有益な情報なんて手に入らない。苦労するだけ無駄だ」
「どうするのハーマイオニー?毒ツルヘビの皮の千切りなんて、スネイプの個人用保管庫にだってあるかも分からない。それにどうやって盗みに入るのさ」