第14章 【別れ道】
すると――消える、確かに消える。この2ヶ月近く呪いのように染み付いていたロックハートの馬鹿げたサインが、どんな手を使っても薄れることさえなかった悪魔のサインが、まるで何事もなかったかのように綺麗さっぱり消えてなくなったではないか。こんなに嬉しい事はない。
クリスは喜びのあまりドラコに抱きついた。
「ありがとうドラコ!やっぱりお前は永遠の親友だ!!」
「ま、まあそこまで喜んでもらえるなら僕も――「それだーーっっ!!」」
ドラコがクリスの背中に腕を回そうとしたまさにその瞬間、ハリーが勢い良く立ち上がってクリスを指差した。
「なんで気づかなかったんだろう、ほら皆早く支度して、行くよ!!」
「行くって、まだ僕食べてる途中――」
「そんなのいいから早く!早く!!早く!!!」
何をそんなに急いでいるのか、ハリーは未だ口の中に食べ物が入っているロンの首根っこをつかむと、無理やり大広間から連れ出した。それにつられて、ハーマイオニーとクリスも急いで大広間を後にした。
残されたドラコと、行き場を失ったその腕に、12月の冷たい風が通り過ぎていった。
ハリーはロンを摑まえたまま階段を2段飛ばしで駆け上がると、息も絶え絶えに合言葉を言って談話室に入った。その後を、少し送れてクリスとハーマイオニーが駆け込んでくる。
「ハリー、いったいどうしたんだ?」
「ロックハートだよ、ロックハート!あいつに頼めばいいんだ!あいつならちょっとおだてていい気にさせて紙とペンさせ渡せばなんにでもサインしてくれるよ!!」
談話室にハリーの興奮した声が響く。「なんでそんな単純なことに気が付かなかったんだろう」と言って、ハリーは慌ててかばんの中から時間割表を取り出した。
「あるっ、今日の午後早速授業だ!」
「ちょ、ちょっと待ってハリー、本気なの?相手はホグワーツの先生なのよ」
「あいつでダメなら他の先生全員ダメさ、僕の箒を賭けたっていいね」
ハリーの目は本気だった。確かに相手は頼みもしないのにクリスの召喚の杖にサインを施すほどだ、相手としては申し分ないだろう。だが――不安が残る中、ハリーは早速今回の作戦について説明した。
「さあ、行こう!僕らの目標はただ1つ、ロックハートのサインだ!!」