第13章 【トイレのマートルさん】
「でも、いったい誰なのかしら?」
「何が?」
「例の“真の継承者”よ、いったい誰が出来損ないのスクイブやマグル出身の子達を追い出そうとしているの?」
「Let's Thinking time」
ロンが両手を広げおどけるように言った。まるで答えの分かりきっているなぞなぞを無理やり考えているようだった。
「このホグワーツの中で、“マグル生まれはクズだ、ゴミだ、いやそれ以下だ”と思っているのは誰でしょう?ヒントは、我々の知っている中にいまーす」
「我々のって……貴方まさかマルフォイだって言いたいの!?」
「その“まさか”さ!」
「ああ。それは無いな」
クリスの言葉に、今度はロンが目を丸くする番だった。今言った事が信じられないかのように、クリスの顔をじっと見つめている。
「冗談だろ、君だって聞いたはずだぜ“次はお前だぞ、穢れた血め”って。いくら許婚だからってそこまで庇う事ないだろ」
「なんだと。誰が、いつ、どんな理由で庇っただと……」
触れてはいけない一言に、クリスの目が鋭く光った。今ここにネサラがいたらロンは間違いなく襲われていただろう。一触即発の雰囲気を悟ったハリーがとっさに間に入った。
「待った待った、今はまだ可能性の話をしているだけであって、仲間割れしてる場合じゃないよ」
「だから、その可能性が無いって言ってるんだ」
「その証拠は?いったいどこにあるんだよ」
それを言われては、クリスは黙っているしかなかった。
代々スリザリンの家系とされてきたグレイン家。“その血を手に入れる為に”わざわざ仕組まれたのがこの政略結婚だからだというのがクリスの言い分だったが、それを話すとなると皆に自分がスリザリンの血を引いているかもしれないという事がばれてしまう。クリスとしては、それだけは避けたかった。