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ハリー・ポッターと純血の守護者

第13章 【トイレのマートルさん】


「ほら、証拠がないんだろ。これで決まりだって。あいつの家が代々『秘密の部屋』の鍵を親から子へ伝えてきたんだって」

 これで決まりだ、とでも言いたげなロンに対して、クリスも反論せざるを得なかった。

「それならどうして1年前にそれを使わなかった。それこそ理屈に合わないだろう」

 もし本当にドラコが“真の継承者”なら、1年前にとっくに『秘密の部屋』の封印を解いているはずだ。純血主義のドラコがマグル生まれを追い出すのに、1年間もためらう筈がない。それは誰よりもクリスが一番良く分かっていた。

「証明する方法がないこともないわ」

 それまで思案に耽っていたハーマイオニーが突然口を開いた。顔は真剣そのもので、辺りを警戒し声を落として話し始めた。

「でもとても危険だし難しいの。それに学校の規則をざっと50は破ることになるわ」
「でも、方法がないわけじゃないんでしょ」
「ええ、ポリジュース薬を使うのよ」

 聞いたことの無い名前に、3人は首をかしげた。それを見てハーマイオニーがあきれたようにため息をついた。彼女曰く、数週間前にスネイプが口にしていたらしいが、スネイプの一言一句を覚えているほど優等生なクリス達ではない。ハーマイオニーはふうっと一息つくと話を元に戻した。

「この薬を使えば、他人に変身できるのよ。それを使って、スリザリン生に化ければいいわ。そうすればマルフォイから直接話を聞けるし、正体がばれる心配も無いわ」
「それがあれば楽勝だな。マルフォイの事だ、こっちから聞かなくったって勝手に自慢してくるぜ」
「それがそう簡単にもいかないのよ。材料を手に入れるのがとっても難しいし、それにつくり方の載っている『最も強力な薬』という本が恐らく図書館の禁書の棚にあるのよ」

 禁書の棚と聞いて、3人は愕然とした。禁書の棚とは言葉どおり立ち入り禁止の棚になっており、その棚にある本を手に入れるには先生のサインが必要になるのだ。

「まさに机上の空論だな」
「いいえ――何か手があるはずよ。例えば理論的な興味だけだと思い込ませれば――」
「そうは仰いますがね……」

 ロンは諦めたように小指で耳の穴をほじくると、耳垢をフッと息で吹き飛ばした。

「そんなに間抜けな先生なんてホグワーツにいるかよ」
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