• テキストサイズ

ハリー・ポッターと純血の守護者

第13章 【トイレのマートルさん】


 ハリーが叫ぶと、マートルはヒステリック気味になりながらもハリーに近づいてきた。あんまり近づきすぎて、もう少しでハリーとマートルの鼻がくっつきそうだ。ハリーは冷やりとする寒さを我慢しながら事件当時ここで何があったかを聞いた。するとマートルは突然分厚い黒縁眼鏡の奥からボロボロと涙をこぼし始めた。

「私っ、私あの晩は、あんまりにもピーブスが酷いことを言うもんだから、ここに入り込んで独りで泣いてたの」
「その間に誰かここに近づかなかった?」
「そんなの気にしていられなかったわっ!!だって私、私、もう生きてるのが辛くって……じ、自殺しようと――」
「もう死んでるだろ」

 ロンのさりげない一言に、マートルはついに耐え切れずヒステリックな叫び声をあげると、天井まで飛び上がって勢い良く便器の中にダイブした。可哀想にハリーとハーマイオニーはもろにその水しぶきを浴びてしまい、言葉を失った。マートルはまだパイプのどこかに引っかかっているのか、トイレの中はしゃくりあげる声が時々響くだけだ。

「あれでも、まだマートルにしては機嫌が良い方なのよ」

 ハーマイオニーはハンカチを取り出して、濡れた顔と制服を拭いた。クリスはやっとロンの腕から解放されると大きくため息をついた。

「あれじゃ苛められるのも良く分かる」

 ポツリとクリスが呟くと、それがマートルに聞こえたのか突然ゴボゴボと便器の水位が上がり、辺りを水満たしにし始めた。4人はそれから逃げるようにトイレを後にすると、突然大きな声が降りかかってきてクリス達は思わず身をすくませた。
 見るとロンの兄のパーシーが、立ち止まってこちらを見ている。言葉が見つからないのか、口をパクパクさせながら腕を震えさせている。

「なんだ、パーシーか」
「なんだじゃないだろう!お前、今どこから出てきた、そこは女子トイレだぞ!!」
「知ってるよ、でも誰も使ってない。ちょっとした調査をね……」

 パーシーは大きく息を吸い込むと、顔を真っ赤にさせて大またでこちらに近づいてきた。そしてロンの腕をつかむと、『嘆きのマートル』のトイレから無理やり遠ざけた。
/ 294ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp