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ハリー・ポッターと純血の守護者

第13章 【トイレのマートルさん】


「ここには何も無いな……」
「これ焼け焦げだ――こっちにも、こっちにもある!」
「ちょっと来て!これ見て頂戴」

 窓の近くにいたハーマイオニーが叫んだ。それにつられる様にしてクリスも窓に近づく。するとハーマイオニーが指差している窓の上の方に小さな割れ目があり、不思議なことに、その割れ目から小さなクモが何十匹と列を作って外に出ようとしていた。床を調べていたハリーも立ち上がり、訝しげにクモの様子を見ている。

「クモがこんな風に団体で行動するの、見たことある?」
「……いや」
「僕も初めて見た。ロン、君は?――ロン?」

 返事がないので振り返ってみると、ロンは廊下の曲がり角ギリギリのところからこっそりこちらを伺っていた。こんなときに何しているんだと、クリスはあきれた様にロンを呼んだが、ロンはそこから動かず、微かな声が廊下の端から聞こえてきた。

「ダメなんだ、僕……クモが……好きじゃない」

 消え入りそうな声で、そうロンが答えた。廊下に一瞬の静寂が響き渡った後、くぐもった笑い声が誰からとも無く吹き出した。誰にでも苦手なものの1つや2つあるのだから笑っちゃいけないと思いつつも、へっぴり腰で壁にすがり付いているロンを見てクリスは笑いが止まらなかった。

「くっはは、そっ、そうか……そりゃ、わる、悪かっ、た」
「君、全っ然悪いと思ってないだろ」
「それにしても知らなかったわ、クモなんて魔法薬学の授業で何度も使ってるじゃない」

 ハーマイオニーまでもが笑いをこらえながら言うと、ロンはますますムキになったようだった。

「死んでるやつなら平気なんだ、ただあいつらの動きが嫌なだけで……笑うなって、おい、笑うなったら!!」
「OK、OK、この話はここまでにしよう。あと何か、おかしなところは見つかったかい?」

 親友が女の子達にからかわれているのを見るに見かねたハリーが助け舟を出した。しかし女の子達のクスクス笑いは暫らく止まらず、クリスなんかは立っているのがやっとだった。ロンはますます顔を真っ赤にして怒っていが無理もない、いくら親友と言えども女の子にここまで笑われたのはきっと彼の人生で初めての事だろう。
 ひとしきり笑った後、クリスが不意に床にあった水溜りのことを思い出した。
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