第12章 【歴史的な授業】
「気分が悪いので、医務室に言ってもいいですか?」
「ああ、そうしなさい。だれか、付き添いを――」
「いえ、結構です。1人で大丈夫です」
隣に座っていたハーマイオニーが小さい声で「大丈夫?」と声をかけてくれた。その声に消え入りそうな声で「大丈夫だ」と告げると、クリスはふらふらとした足取りで教室を後にした。
医務室に入ると、マダム・ポンフリーがクリスの顔色を見て、慌てて検査を始めた。こんなに周りが慌てるほどだ、自分はいったい今どんな顔をしているんだろうとベッド際にあった鏡を見てみると、なるほど確かに死人のような顔色をしていた。しかし心臓はまるで壊れる寸前ではないかと言うほど煩く鳴り響いている。
検査の結果何も無いことが分かると、マダム・ポンフリーは授業が終わるまで寝ていなさいと言いつけた。クリスは言いつけどおりベッドにもぐりこんだが、まったく眠れる気配は無かった。
スリザリンの残した『秘密の部屋』、封印された怪物、襲われたミセス・ノリス、壁の血文字、そしてこの身に流れると言われるスリザリンの血。まさか真の継承者とは――クリスは血がにじむほど下唇をかみ締めた。
違う、絶対に自分じゃない。確かにミセス・ノリスが襲われた日、クリスは直前にミセス・ノリスを見かけている。だが確かにその後談話室に行っていて、3階の廊下などには立ち入らなかった。それにどう記憶をたくり寄せても怪物はおろか『秘密の部屋』の場所さえ分からない。
それにグレイン家はスリザリンの末裔だと言われているが、千年も昔の話で、確証なんて無いに等しい。むしろスリザリン寮の誰かが知らず知らずのうちにその血を受け継いでいる可能性だってある。