第12章 【歴史的な授業】
そう自分に言い聞かせても、クリスの中の不安は一向に消えなかった。クリスは毛布を頭までかぶって目をつぶった。
(違う、絶対に違う、私じゃない……私じゃない……)
そうしてどれくらいの時間がたったのだろう、不意に医務室の扉が開いて誰かが入ってきた。一瞬ドキッとしたクリスだが、聞きなれた声に、クリスは自分の心が解けてゆくのを感じた。
「先生、クリスの容態は?」
「心配ありません、軽い貧血でしょう」
「もう帰っても良いんですか?」
「良いでしょう。ミス・グレイン」
呼びかけられて、クリスはベッドから起き上がった。仕切られていたカーテンが引かれると、心配そうな顔をしたハリー、ロン、ハーマイオニーの姿があった。教室から走ってきてくれたのか、3人の息が少しだけ上がっている。
「大丈夫?まだ顔色が悪いみたいだけど……」
そう言って、ハーマイオニーの手がクリスの頬にやさしく触れた。その温かさに、クリスは今まで悩んでいたのが馬鹿らしくなるくらいほっとした。
「大丈夫だ、大丈夫」
クリスはその手と自分の手を重ね合わせた。
誰が真の継承者だか知らないが、この温もりを傷つけるやつは絶対に許さない。たとえそれがどんな相手だろうとも。必ず――クリスはグッと握りこぶしに力を入れると、固く己に誓った。