第11章 【真夜中の尋問】
「それじゃあ、皆僕のこと信じてないの?」
「少なくとも、私は信じてるぞハリー。私にだって、私にしか聞こえない声がある。ただ私はそれが精霊のものだって分かってるけど、ハリーの聞いた声は正体不明だ。場合によっては、ハリーに隠された力があることになる」
「隠された力?」
「私の召喚術と同じく、他人とは違う血が入っているかもしれないって事だよ。現に壁にはこう書かれていた『秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ 気をつけよ』ってね」
「それじゃあ、君はハリーが継承者だって言いたいのかよ!!」
突然ロンが立ち上がった。無理もない、クリスの言葉ではまるでハリーが犯人だといっているようなものだ。親友を疑うようなことを言ったクリスに、ロンは腹を立てた。
「君はあの場にいなかったから知らないのかもしれないけど、僕らはずっと一緒にいたんだ。絶対ハリーにあんな事出来る筈がない」
「落ち着けロン、私は誰にも聞こえない声っていうのが、どれほど危険な物かと言ってるだけだ。今ここで冷静な判断力を失ったら、ハリーの身が危険にさらされる可能性だってあるんだぞ」
ハリーを心配しているのはロンだけではない。クリスも、もちろんハーマイオニーだって心配している。心配しているからこそ、ハリーにしか聞こえなかった声というのを警戒しているのだ。ロンは何度か肩で息をすると、ムスッとした顔で再びソファーに座りなおした。
「そうよ、落ち着いてロン。この場合継承者がどうこうよりも、どうしてハリーにだけ声が聞こえたのかの方が問題よ」
「それと、あの血の文字『秘密の部屋は開かれたり』って、一体どういう意味なんだろう」
「……ちょっと待って、聞いたことがある――」
ロンの言葉を最後に再び部屋に沈黙が訪れた。その間、クリスも秘密の部屋について考えていた。どこかで聞いたことがあるはずだ。ホグワーツに訪れるずっと前に――ホグワーツにある隠された扉、入るものを選ぶ、死の部屋――だがそれが何処だったか、誰に教えてもらったのかさっぱり思い出せない。まるで記憶にふたをされているようだ。