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ハリー・ポッターと純血の守護者

第11章 【真夜中の尋問】


 とっさにクリスは声を落とした。談話室に一瞬の沈黙が走る。クリスは例の声を思い出したが、まさかと思って頭を振った。あの声は一瞬しか聞こえなかったし、それ以降も聞いたことがない。あれは聞き間違えか、単なる偶然の一致だと思って黙っていた。するとハリーが話を続けた。

「その声が、僕にしか聞こえないってロンもハーマイオニーも言うんだ。でも僕は確かに聞いたんだ、誰かを殺そうとしている声が、壁の中を移動するようにして動いていくのを。それを追いかけて行ったら――」
「――3階のあの廊下に行き着いた、と?」

 言葉もなく、ハリーは頷いただけだった。
 どういうことなのだろう、ハリーにしか聞こえない声が、ハリーをあの現場に導いた。そんな事可能なのだろうか。そう言えばダンブルドアが言っていた、この魔法は強力な闇魔法か、あるいはそれに順ずるものだと。ハリーはそれに惑わされてしまったのだろうか。そうなると、ハリーに何の異変もないのがおかしいし、ハリーだけが闇魔法にかかってしまったという理由もつかない。ハリー、ロン、ハーマイオニーは一緒にいて、条件は3人とも一緒のはずだ。唯一つ、違うのは――。
 クリスはハリーの額にある傷跡を見た。そして自分の左手首をつかんだ。強力な闇魔法、ハリーにしか聞こえない謎の声、あの廊下で聞いた囁き、心なしか濃くなった左手首の痣。考えれば考えるほど嫌な方向にばかり言ってしまう。それが顔に出ていたのか、ハーマイオニーが心配そうに窺った。

「クリス、大丈夫?貴女顔色が悪いわよ」
「いや、大丈夫だ。それよりハーマイオニーの方こそだいじょうぶなのか?」
「私はなんとも。ただ絶命日パーティの疲れと……ショックが大きかっただけだから」

 ハーマイオニーの言葉に、あの場面がいやでも蘇る。水溜りに映るミセス・ノリスの変わり果てた姿、そして血文字で描かれた不思議な言葉――。

       ――秘密の部屋は開かれたり――
       ――継承者の敵よ 気をつけよ――

「僕、正直に言うべきだったかな?」
「いや、止めた方がいいね」

 ハリーの問いに、ロンが口の端についたパイの食べかすを手の甲で擦りながら答えた。

「ハリーは知らないと思うけど、誰にも聞こえない声が聞こえるっていうのは、魔法界でも狂気の始まりだと言われてる」
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