第11章 【真夜中の尋問】
足元には気も失わんばかりに消沈しきったフィルチに、これまで自分がどれほど呪いで殺されかけた人々を救ったのか吹聴するロックハート。スネイプは疑り深い目でハリー達を睨み、頼みの綱のダンブルドアとマクゴナガル先生は、時が止まったかのように動かなくなったミセス・ノリスを杖で突いたり、時々何か呪文を唱えたりと、クリス達には一声掛けることもなく熱心に調べ上げている。
クリスは胸の不安がどんどんと膨れ上がるのを感じていた。目をつぶれば蘇るあの凄惨な場面。そして耳に残るドラコの言葉、そして――人知れず、クリスは左手首を握り締めた。誰か嘘だといってほしかった。自分はただ運悪くあの場に居合わせただけだと。しかし聞こえてくるのはフィルチの嗚咽とロックハートのふざけた自慢話ばかりだった。
どのくらいの時間がたったのだろう。やおらダンブルドアが顔を上げると、柔和な笑みをたたえて息をついた。
「安心しなさいアーガス、猫は死んではおらんよ」
その言葉に、部屋中にいた人間が驚いて言葉を失った。しかし机の上にころがるミセス・ノリスは、誰がどう見たって猫の剥製そのものだ。息をしているとは到底思えない。
「石になっておるだけじゃ。じゃが、どうしてそうなったのかは儂にも分からん」
「あいつだ、あいつの仕業に違いない」
フィルチは再び目を血走らせ、親の敵を見るような目でハリーを見た。しかしハリーにこんなことが出来るはずがないのは周知の事実だった。何せダンブルドアでさえ解けぬ魔法なのだ。見習い魔法使いのハリーにこんな芸当できる訳がない。しかしフィルチは何が何でもハリーが犯人だと決め付けているようだった。
「あいつは知っているんだ……壁の文字を見たでしょう!あいつは……あいつは……あいつは私が出来損ないのスクイブだって知っているんだ!」
突然の告白に、その場にいた一同のみならず壁に貼られたロックハートの写真ですらフィルチを見つめていた。スクイブとは、マグル生まれの反対で、魔法使いの家系から生まれたにも拘らず魔法が使えない人のことを言う。まさかフィルチがそうだったとは知らず、クリスは絶句した。ハリーはスクイブが何なのか分からず二の句が告げぬようで、困った表情でフィルチを見つめている。
「校長、宜しければ一言言わせていただけますかな?」