第11章 【真夜中の尋問】
クリス達が談話室に戻ってくると、その場にいた生徒達は一斉にこちらに視線を向け、サッとその場からいなくなってしまった。時間は0時を少し回ったくらいだ。誰もいなくなった談話室に、4人はどっと疲れてそれぞれイスに座り込んだ。
「そうだ、もし良かったらこれ……」
一息ついた後、クリスは3人のために大広間から持って帰って来ていたパンプキンパイとタルトを差し出した。ロンはその場で齧り付いたが、ハリーはタルトの端を少し齧っただけで、ハーマイオニーはただ視線を手元のパンプキンパイに落としただけだった。もって帰ってきたときは暖かかったパイとタルトも、今では完全に冷め切っている。
「それで、本当は何があったんだ?」
「僕の言うこと、本当に信じてくれる?」
ハリーは恐る恐るクリスの顔をのぞきこんだ。その表情には、いまだ戸惑いが隠せないでいる。クリスはハリーの瞳を見つめ返すと小さくうなずいた。
「そうだな……まず、どこから話せばいいんだろう」
ハリーは完全に疲れているようだった。当たり前だ、あんな目に会えば誰だってそうなる。時間はそう、1時間ほど前までさかのぼる――
* * *
「お前かッ!お前が私の猫を殺したんだな!!」
「僕、ミセス・ノリスには指一本だって触れていません!!」
ロックハートの部屋に入った途端、フィルチはハリーの胸倉をつかんで襲い掛かった。泣きはらした目は血走り、その顔は狂気がはらんでいる。
「嘘をつけ!お前なんだろ、俺が、俺がお前を殺してやる!」
「放してください、僕じゃありません!!」
「そうです!それに私、パーティの最中廊下でミセス・ノリスを見ました!」
「それじゃあお前か!お前が私の可愛いミセス・ノリスを!」
「お止めなさい、アーガス!」
マクゴナガル先生の厳しい声に、フィルチは泣き崩れるようにしてクリスから手を放した。嗚咽を洩らしながら、時々「ノリス……ミセス・ノリス」と愛猫の名を呟いている。クリスは大切なものの死に初めて立ち会ったことに不安と哀れみを覚えた。
こんな真剣な場面だと言うのに、ロックハートは「自分がその場にいれば猫を助けられたと」自慢して回っていた。現場から一番近かったと言う理由でロックハートの部屋に通された4人だったが、これは何の責め苦かと思った。