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ハリー・ポッターと純血の守護者

第10章 【blood】


 どちらも譲らないクリスとドラコ。折角のハロウィーンパーティくらい喧嘩は止められないのかとも思うが、これはこれで2人の挨拶みたいなものだ。ドラコは暫く机をはさんでクリスを睨んでいたが、クリスの性格を熟知したドラコはやがて手を変え品を変え、とっておきの方法に出てきた。

「そうかい、そういう態度をとるのか。折角君さえ良ければ、父上に頼んで何でも落とせるインク落としを借りてやろうと思ったのに」

 「何でも落とせるインク落とし」と聞いて、今度はクリスが詰め寄る番だった。この1ヶ月以上の苦労を知らぬドラコではない。クリスは召喚の杖に未だキラキラ輝くライラック色のサインを見つめた。これが、これがついに落とせる日が来るのかと思うとドラコの話に耳を傾けざるを得なかった。クリスの表情が変わったことに、ドラコはニヤリと笑った。

「効果の程は?」
「大きな声じゃ言えないが、父上が魔法省などの書類を“ちょっと書き直す”時に使う」
「条件は?」
「魔法史のレポート10回分」
「多すぎる、3回分にしろ」
「8回分」
「4回!」
「5回」

 ぐぬぬ……とドラコを睨んでも、彼はそれ以上まける気はないらしい。さあどうする?といった笑みを浮かべるドラコに、クリスはついに折れた。

「分かった、魔法史のレポート5回分だな」
「良し、交渉成立だ!」

 2人が握手を交わしたその時、大広間の前の方からスモークがたかれ、辺りを覆いつくし始めた。どうやら骸骨舞踏団の登場らしい。一気に前に詰め寄る生徒にまぎれて、クリスはカボチャのパイとタルトをそれぞれ1つずつ合計3個をナプキンに包みこんだ。

「どうしたんだいクリス、踊らないのか?」
「冗談、私がそんなもの好きだと思うのか?私は先に戻ってお馬鹿3人の帰りを待ってるよ」

 じゃあな、と手を振るとクリスはそのまま大広間を後にした。暖かい大広間から1歩足を踏み出すと、冷たい廊下が待っていた。これでもきっと地下牢よりはマシなはずだろう。クリスが足早に談話室に向かう途中、廊下の奥から光る目玉が2つこちらを見つめていた。ミセス・ノリスだ。
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