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晴のち雨のちキス【実l況l者/短編集】

第20章 臆病な君と恋がしたい/uszw


目の前に積み上げられた段ボール
呆然と立ちすくむ私

「マジかぁ…」

ポツリと呟いた言葉は、誰もいない資料室に虚しく消えていった



退社間際、課長から資料室に置いてあるファイルを探してほしいと頼まれた
資料室は広いが、よく使う資料などは綺麗にファイリングされ、整頓されているので、行けばすぐに見つかるはず
きっと課長もそう思って私に頼んだんだろう

それが、まさかの未整理状態

20箱ほど部屋の隅に存在を忘れ去られたかのように積み上げられたまま

段ボールの側面には『〇〇年資料』としか書かれておらず、一つずつ開けていくことでしか確かめる方法がない

誰よ、これ詰め込んだの…

とりあえず心当たりのある同僚の顔を頭の中でグーパンしておく

盛大な溜息と共に私の定時退社は儚くも消え去っていった…


ひとまず一番手前にある段ボールに手を掛け、グッと力を込めて持ち上げてみる…が、物凄く重い!

これは中身を確認する作業よりも、段ボールを移動させる方が労力がいる

誰か手伝ってくれないかなぁ

なんて思ってみるものの、資料室には私以外誰もいないし、わざわざ同じ課の人を呼ぶのも気が引ける

もうすぐ退社時間だし
きっと嫌な顔されるだろうし
力仕事を頼めそうな同期の清川は特に文句言いそう
かと言って依頼元の課長に言うのもなんかなぁ…

こんな時、人に頼れないタイプって損をする

そう言えば以前、先輩に言われたことがあるな
困った時は人を頼れって
頼られた側は意外と嬉しいもんだよって

…あぁまた思い出してしまった

先輩のこと

新入社員の頃、教育係だった
いつも何かと世話を焼いてくれた

かっこよくて、優しくて、仕事ができて
時々ペットや趣味の話をしてくれる時は、少年みたいにキラキラした顔をして

でも半年前に他部署へ移動してしまったため、今ではほとんど会うことがない

懐かしさと、チリっと痛む胸

三年間も一緒にいたのに
いなくなって気付くなんて…

忘れたい今更な想いがまた顔を出す

はぁ、と再び溜息をつくと、資料室のドアが開く音がした

「つばさ…?」

入って来るや否や、耳に届く聞き慣れた声

「え、牛せんぱ……牛沢、主任…?」


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