第13章 あなたが全てな私/rtrt
あなたは東京に行って
私はここに残る
これで私たちの関係は終わったんだと思ってた
『夜8時に空港に着くから迎えに来て』
前日に突然届いたLINE
一年も連絡よこさないで…
行くわけないでしょ!
無視!無視!!
そう思いながらも、何度もその文面を読み返す
自分でもバカだと思う
嬉しくて明日を待ち遠しく感じてしまう
結局は一年前と何も変わらない私
あなたが全てな私
そして今、空港の到着口で彼を待っている
人の波が出口に押し寄せ、少し離れた所からその人物を捜す
その中から見つけた彼は、こちらに気付き手を振る
「つばさ!」
一年ぶりに呼ばれた名前
「…レト…。」
「返信ないから、来ないんやと思ってた。」
笑顔でそう言って、私の手を取る
返信をしないことは精一杯の抗議だった
でもレトはきっとわかってた
私がここに来ることを
「じゃあ行こっか。」
繋いでくるその手を拒まずに、駐車場まで歩いた
少しドライブしよう、とレトからの提案で、あてもなく車を走らせる
「たった一年なのに、なんか懐かしいなぁ。」
私からすれば何も変わっていない街並みを、助手席に座るレトは感慨深そうに眺めている
「東京はどう?」
「めっちゃ楽しいよ。
可愛い子たくさんおるし。」
多分、何の気なしに言っているんだろう
以前の私だったら、嫉妬に駆られてたかもしれない
他に好きな人できたの?とか
私のことどうでもよくなったの?とか
泣き縋ってる私を、冷たく突き放すレト
そんな光景が思い出された
ネオンで煌めく街中を抜け、郊外に出ると、車通りも少なくなる
あてもなく走っているつもりだったけど、
無意識に向かっているのは、思い出の場所だった
「この辺、二人でよう来たなぁ。」
レトは楽しそうに、思い出話をする
自然と空気が和んでいく
まるであの頃に戻ったような錯覚
レトはどう言う気持ちで私に連絡をくれたのかな
期待してもいいのかな
私はまだレトのこと…
終わっていたと思っていた気持ちがふつふつと込み上げてくる
夜景の見える高台に着くと、車を停める
ここもよく来た場所
フロントガラス越しに見る景気は、一年前と変わらずに輝き続けていて、私に妙な期待をさせる
今日なら戻れるような気がした