第12章 求愛論/ky
軽い水音がなる
ゆっくりと離される唇と唇
ここはベッドの上
正しくはキヨの上
「…な、何してんの…」
「何って…キスだけど。」
悪びれもなく答えるキヨ
体を起こそうとするが、首の後ろに回された両手がそれを阻む
「キヨさん、酔ってらっしゃるのデスヨネ?」
「は?俺酔ってねぇよ。」
だとしたら、これはどんな状況…?
キヨの顔の横に両手を突いて、馬乗りになっている私
側からみれば、完全に私が押し倒してる
だけど正解は、部屋飲みしていて酔っ払ったって言うからベッドまで連れて行ったら、腕を引かれてこんな体勢
かと思えば、両手を首の後ろに回されると、グイッと引き寄せられ…今に至る、みたいな
「キヨ、冗談は…」
「冗談でキスなんかしねえよ。」
ちょっと真面目な顔なんてするから、言葉に詰まる
「つばさ、…俺たち付き合おうよ。」
「え…?」
唐突すぎる
しかもさらっと言うから、こんな時に感じる特有のドキドキがない
「な、なんで…?」
「なんでって…
つばさのこと、
…好きだから。」
好き。
実は以前から薄々感じていた
キヨは遊びでこんなことをしないのはわかってるから、きっと本気なんだろう
なのになぜこの状況にこんなに冷静なのか
キヨのこと、好きなんだけど
本当は嬉しいんだけど
何かが心に引っ掛かる
うーん、と声を漏らすと、この状況を振り返ってみる
全ては心のどこかで望んでいたこと
なのに腑に落ちない
「キヨ、ちょっと待って。
なんかおかしい。」
「おかしいって何が?」
キヨがムッとして私に食ってかかる
この違和感はなんだ?
こんな時、どうしてたんだっけ?
もっとドキドキして、キラキラしてた気がする
なんか違う…
そう、
「順番が。」
「は?順番?」
「…うん、順番。」
自然に緩まった手を外し体を離すと、ベッドに腰掛ける
キヨも体を起こし、私の隣に座る
不思議そうな顔で見つめてくるキヨは、私の言葉をじっと待っている