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晴のち雨のちキス【実l況l者/短編集】

第10章 わたしの好きな人/rtrt


「や、違…!」

「俺のこと、拒むの?
好きって言うのは嘘?」

上に上がってくる手を必死に押さえようとするが
どう足掻いても男性の力には勝てそうになく

「レトさん、やだよ…こんなの…!」

「また間違うた。
キヨくん、な。」

肩を押されソファに倒れ込むと
体にレトさんの体重がかかる

見上げるレトさんは熱っぽい目をしていて、生唾を呑み込む音がした

「…つばさ、
キス、してもいい?」

低く掠れた声で囁かれる
普段とは違う初めて聞く声色

これも練習…?
私に付き合ってくれてるだけ…?

「…キ、キヨさん…なら…。」

逃げられそうにない状況に覚悟を決めて、ぎゅっと目を閉じる
レトさんの熱が間近に感じられて、心臓がうるさく響く

でもほんとにキヨさんだったら…?

私は……



唇に降ってくるものに身構えていると
急に体が軽くなる

「……?」

ゆっくりと目を開けると、レトさんは私から体を離し、苛立ったような顔をして項垂れていた

「…レトさん?」

私も起き上がり、レトさんの顔を覗き見る

「やっぱ無理。」

「え…?」

「キヨくんの代わりとか無理やわ。」

そう呟くと、私に向き直る

「俺とキスする時は、ちゃんと俺のこと考えてくれんと無理。」

真っ直ぐに見据える瞳に射抜かれたように胸の奥が反応する
それと同時に、顔に熱が集まってきているのを感じる

「レト、さん…、私…、」

レトさんはハッとした顔をすると、みるみる内に赤くなっていく

「あぁもう…俺カッコ悪…。」

居たたまれなくなったのかソファから立ち上がると、私に背を向ける

「…てか、つばさとキヨくんがキスするとか、もっと無理。」

そう吐き捨てるように言うと
飲み物取ってくる、とキッチンへ消えて行ったレトさん

一人残された私は
込み上げてくる熱をどうにもできなくて
ただただレトさんの言葉が頭を駆け巡る

追いつかない思考の中
確信できることが一つ

キヨさんとの練習だったけど
レトさんだからキスしてもいいと思った


足音が聞こえてくる

レトさんが戻ったら伝えてみようかな

こんなに胸が高鳴る理由を
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