第10章 わたしの好きな人/rtrt
レトさんの横に座り、一つ咳払い
「えっと、キヨさんは彼女とか…好きな人いるんですか?」
「もう始まっとるし!
てかいきなりな質問やな…
あー、おるよ。」
「ちょっと!そこ『いない』が正解でしょ!
しかも関西弁禁止!!!」
「正解って…ほんまにおったらどうするん?」
…確かに本当にいる可能性だってあるよね
あんなにかっこいいんだから
あからさまにしゅんとした私に、レトさんは笑って続ける
「まぁ今はおらんと思うけどな。」
口角を上げ、意地悪そうな顔
これは完全に真面目にやるつもりがない!
「もう!こっちは真剣にやってんだから!」
レトさんの腕を思いっきり叩こうと手を上げる
しかし振り下ろす前に手首を掴まれてしまう
「で?俺のこと好きなの?」
「え…な、何…?」
口元は笑っているけど
目は真っ直ぐに私を捉えて
少し、怖い
「何って、練習やろ?
もしキヨくんがこうやって迫ってきたらどうすんの?」
急にレトさんが乗ってくれたことに戸惑いつつ、次の台詞を考えてみる
手首は囚われたままで少し痛い
「あ、えっと…好き、です。」
「俺のどこが好きなの?」
レトさんのもう一方の手は私の頰に触れると、そのまま首筋、鎖骨をなぞる
恥ずかしくなって顔を背けると、手はまた頰に触れ、正面を向かされる
「ほら、答えて。」
「う、ん…
えっと、かっこよくて…笑顔が素敵で…」
頰に添えられた手の親指が私の下唇に触れると、形を確かめるかのようになぞりだす
普段はしないそんな行為
心臓の音が早くなる
「…背が、高くて……んんっ!」
下唇に充てた親指は、口を開いた瞬間、口内に侵入してくる
舌に絡ませるように動く指に体ごと逃げようとするが
掴まれた手首に一層力が込められ、引き寄せられてしまう
「あ、ん…んっ、は…レトさ…」
「キヨくん、やろ?」
「んん…キ、ヨさ…あ、やめ…」
やっとの事で親指が抜かれると
唾液が口の端から垂れるのがわかって恥ずかしさが増す
親指で口元を拭われ、下唇に塗りつけられると、ゾクリと背筋が震えた
「…つばさ、そんな顔できるんや…。」
手首を掴んでいた手は離され
その手は腰を引き寄せる
「こんな格好して
俺のこと誘ってんの?」
今度はワンピースから露わになった太ももに手を掛けられる
思わずビクッと体が揺れた