第8章 放課後ランデヴー/uszw
今日も私は理科準備室へ走る
お昼休みは牛沢先生に会いに行くのが日課だ
ドアの前で呼吸を整えノックすると、はい、と聞こえる返事
ゆっくりと開けると白衣を着た人物が振り返る
「牛沢センセ!つばさちゃんが遊びに来たよ!」
「はぁ…またお前かよ。」
大きな溜息をつきながら、面倒くさそうな態度
「邪魔しないからー!」
「何度も言うけど、ここ遊ぶとかじゃねえから。」
と言いつつも決して追い出したりはしない
「見てるだけだから!」
先生を…
完全な片思いだけど
まぁ別にいいけど、なんて言うと、実験器具をカチャカチャと音を立てながら整理し始めた
「…てか毎日こんなとこ来ていいわけ?
受験生なんだから勉強しろよ。」
「いいの!家でやってるから。」
「ふーん…でもお前、この前のテスト確か…」
「わーわー!言わないでー!!!」
先生は大好きなのに
テストの点数はとても悪い…
「あ、先生教えてよ!」
「無理。
俺も忙しいし。
友達にでも教えてもらえ。」
はい、出ました
いつものバッサリ
このくらいもう慣れっこですから
先生冷たーい、といつもの反論
こんな毎日がとても幸せで
叶わない恋だとわかっていても
それでも毎日会いたかった
冷たい態度も
意味のない会話も
私にとっては大切で
でも所詮、先生と生徒
見えない壁が立ちはだかっている
「…お前さぁ、」
先生から話しかけてくれた嬉しさで
満面の笑みではい?と答える
「彼氏いないの?」
「え?」
突然の発言に、心臓が飛び出そうなほど驚いた
これってもしかして…
「いない、ですけど…?」
「ふーん、そうなんだ…。」
先生を見れば、何か考えているような表情
私のこと少しは気にしてくれてるのかな…?
という思いは一瞬で崩れ去る
「いや、お前のクラスに
清川と香坂っているじゃん。
あいつら、お前のこと可愛いって言ってたからさ。」
は?
なに、急に…
「てかさ、こんなところに来るより、あいつらと遊んだ方がいいんじゃねえの?
ついでに勉強教えてもらえば?」
何それ…
私のこと邪魔かもしれないけど
そんな言い方
こんなことを言われたのは初めて
なんだか子供は子供と恋愛ごっこしてろよと言われてるようで
淋しくて
悔しくて
先生と生徒という壁を思い知らされた気がした