第7章 LOVE LETTER/rtrt
自宅で仕事をしている私の家には
ほぼ毎日のように荷物が届けられる
それを届けてくれる郵便屋さん
その彼、レトルトさんに恋してます
「…えっと、今日の荷物はこれですね。」
「すいません、いつもありがとうございます。」
受取票にサインをし、荷物を受け取る
「いえ、大丈夫ですよ、これくらい。」
ニコッと笑った顔に、今日も胸が高鳴る
「むしろ荷物がない日は、なんか落ち着かないくらいですよ。」
営業トークだとわかっていてもドキドキしてしまう単純な私
きっかけは数ヶ月前
その日届けられたのは大きな段ボール
大きさと重さで足元がよろけた私をレトルトさんが支えてくれた
その時に、一瞬触れた唇と唇
そんな少女漫画的展開にまんまと恋に落ちた私
レトルトさんからしてみれば
荷物を守るためにたまたま私ごと支えて
たまたま顔の位置が近くなっただけ
その時のレトルトさんは笑っていて
気不味さも恥ずかしさも感じ取れなかった
なんか自分だけ舞い上がっちゃってるなって思って、少し淋しくなったけど
それでも彼のことが気になって
柔らかい雰囲気や
少年のような笑顔や
時々出る関西弁に
いちいち心が反応して
一方通行でもいい
会えるだけでいい
玄関先での数分の会話が幸せで
その数分のために今日を頑張れる
はずだったのに
「実は、配達ルートが変更になって、俺この地域外れることになったんです。」
受取票を仕舞いながら、さらっと言われる
「え…?」
「来週から変わるんで、配達に来るのもあと一、二回くらいですね。」
淋しくなりますね、と言ったレトルトさんはいつもと変わらない笑顔
まぁそうだよね
私は配達先のお客さん
一日何十軒と配達に行く内のただの一つ
胸が締め付けられるような息苦しさを感じて
これ以上目を合わせられずにいた
それから数日、荷物が届くことはなかった
だからレトルトさんに会うこともなくて
最後、素っ気なくしちゃったな
ちゃんと挨拶くらいしておけばよかった
このまま私の恋は終わるんだ…
溢れそうになる涙を拭った時だった
ピンポーン
家のチャイムがなる
時刻は夜8時
こんな時間に訪ねてくる人はいないし、荷物の配達はいつも午前中にしてる
不審に思いながらインターホンのモニターを見ると
そこにはレトルトさんがいた