第13章 Happiness N×M
学校から帰宅して1時間後。
友人の潤くんからの着信。
僕はドキドキしながら電話に出た。
「はーい」
『もしもし、ニノ?』
「潤くん、どうしました?」
『今日の数学の宿題でさ、どうしてもわからないところがあって』
「それなら、教えに行きましょうか?」
『いや、電話で…』
潤くんが口ごもる。
「もしかして…いるの?」
『うん』
気まづそうな潤くんの後ろから
“ににょ~!ににょ~!”
って、潤くんの弟の翔ちゃんの声がしてる。
『あ~っ、しくじった…』
「うん。“ニノ”って口に出しちゃってたし」
「翔のやつ…」
はぁ、ってため息をつく潤くんと
“ににょ、くる~?”
ってテンションが高い翔ちゃん。
16歳の兄と3歳の弟。
スマホ越しの光景を浮かべると、つい笑みがこぼれる。
『ごめん。やっぱりさ、来てもらっていいかな』
「うん。今から行くね」
『あっ、ちょっと翔、こらっ…』
ガサゴソ音がして。
さぁ、どっちの声が聞こえてくるだろう。
僕は楽しみにしながら、さっきより強めにスマホを耳に当てた。
『ににょ~。翔、まってうからね~』
あはは。
翔ちゃんに軍配が上がったか。
何だかんだ言ってもさ、潤くんってば翔ちゃんに甘いんだから。