第10章 君のために僕がいる S×A
「もう一度言うからね。えっとぉ、Nameは名前でしょ、Ageは年齢でしょ…」
もう一度ってまた最初からかよって思ったけど、本人は真剣だろうから、そこはあえて突っ込まないことにした。
「それで…次がね、セ、セ、セ、セック…あぁ、もうっ。あのね、大文字のSと小文字のeとxが書いてあるの。ね、翔ちゃん。これってあのことだよね?ねっ?ねっ?」
何を言い出すのかと思っていたら、今度は顔を真っ赤にしながら俺の肩を掴んで揺すってきた。
「ちょ、ちょっと落ち着いて、相葉くん」
「無理だよ、落ち着けないよ。だってSとeとxのことを書くんだよ?」
…相葉くん、一体それの何を書くつもりでいるんだい?
「あのさ、相葉くん。それ、違うから。相葉くんが思ってることじゃないから」
「えっ?だってさ、Sとeとxだよ?こんな質問初めてだからさ〜」
「相葉くん、聞いて。それね、意味が違うの」
「へっ?」
すっとんきょうな表情をして、やっと動きが止まった。
「翔ちゃん、どういうこと?どういうこと?」
「えっとね。それ、性別のことだから」
「Sとeとxが?」
相葉くん…その3文字、何回言うつもり?ってか、すっかり言いなれてるし。
もうさ、聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃん。
「だからね、相葉くん。性別を書けば大丈夫だから」
「そっかぁ、性別かぁ。さすが翔ちゃん。ありがとね、大好きぃ〜」
「相葉くん…」
ギュウッと抱きつかれて嬉しいけど、その無邪気さに胸がチクッとする。
俺の気も知らないで…。
俺の好きと相葉くんの好きが違うのはわかってる。
そろそろさ、相葉くんの大切な人がここに来るでしょ。
…携帯ゲーム機を持ってさ。
邪魔をする気はないんだ。
こうやって、相談相手ってポジションくらいは俺にあったっていいんじゃないかなって…。
「また何かわからないことがあったらさ、俺が相談にのるから」
それくらいはいいよね?
楽屋のドアが開くと、相葉くんが幸せオーラを振り撒きながら、愛しい人の元へ駆け寄っていく。
俺は椅子へ戻り、冷めてしまったコーヒー片手に読みかけの新聞に再び目を通した。
「この前はありがとね。翔ちゃんがいてくれて良かったぁ。ふふっ」
俺も…
その言葉とね、相葉くんが笑顔でいてくれるならそれでいいんだ。
END