第9章 season N×S
「なん、でっ」
突然視界が暗くなり、俺の体は暖かいものに包まれた。
「しょ、ちゃ」
俺を抱きしめる力が強くなっていく。
「だって…ニノが泣いてるから」
俺より少し背の高い翔ちゃん。
3年前に入学した当時は、俺より小さくて細かった翔ちゃん。
いつの間にか、こんなにガッチリした体に…。
「…もうさ。翔ちゃんカッコよすぎ」
「えっ?」
翔ちゃんが俺の顔をのぞきこむ。
「翔ちゃん…」
俺も翔ちゃんの背中に手を回した。
「俺…翔ちゃんとの親友も卒業する」
「ニノ?」
「恋人に…なってくれる、かな」
翔ちゃんは何を言われてるのか、わからないって表情をしている。
「好きだよ、翔ちゃん」
俺は翔ちゃんの厚い唇にちゅっ。と触れるだけのキスをした。
翔ちゃんはキョトンとしている。
「俺のだっていう、スタンプ押したから」
「スタンプって…」
「訂正は受け付けない。俺のスタンプだけ有効だから」
翔ちゃんの頬が赤みを帯びていく。
「じゃあ、俺も…」
今度は翔ちゃんの唇が俺の唇に重なった。
「俺もニノのこと、大好きだから…他の人にスタンプ押されないようにしてね」
「しないよ。安心しろって」
さっき解いた手で俺たちが握手を交わしていると、ふわっと春めいた風が吹いた。
さみしくなる気持ちはなくなったわけではないけど…
さっきよりもずっと心は暖かくなった。
END