第9章 season N×S
「じゃあ…元気でね」
「翔ちゃんもね」
「うん、二ノもね」
今日は高校の卒業式だった。
俺たちは今、繋いでいる手を離すタイミングに戸惑っている。
できるならこの手を離したくはない。
俺・二宮和也と彼・櫻井翔は親友だ。
そう、親友…。
「もう行かなきゃ…ね」
「翔ちゃん家はご馳走が待ってるんじゃない?」
「二ノのとこはハンバーグかな?」
「ははっ。そうかも。俺が1番好きなやつだし」
だけど俺が本当に1番好きなのは…。
「じゃあね…」
「じゃあ…」
それぞれが新たな道を歩み出すために。
俺たちは湿りはじめてきたその手をゆっくりと解いた。
チラチラと振り返っては小さく手を振るキミ。
俺はニコッと微笑むのが精一杯だった。
さみしくなる気持ちは誤魔化せそうにないかも。
潤みはじめた目から涙が頬を伝う。
俺、これでもポーカーフェイスだと自分では思ってたんだけどな。
さっきまで翔ちゃんと繋いでいた手をギュッと握りしめた。