第8章 素晴らしき世界 M×N
イチ!ニィ〜サン!シィ〜!
ゴ〜ロク!シチ!ハチ!
イチ!ニィ〜サン!シィ〜!
ゴ〜ロク!シチ!ハチ!
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
俺が所属している野球部では、学校近くの土手をランニングするのもトレーニングメニューの1つになっている。
長い距離を走るのがあまり好きじゃない俺にとってはかなりきつい。
だけど“勝ち取ったレギュラーの座を守るため!”と言い聞かせてモチベーションを上げてるんだ。
モチベーションといえば…
あ、今日もいる…。
俺の胸がトクン、とする。
土手に座っている学ラン姿のその人は、俺と同い年くらいだろうか。
遠くからでもわかる、色白で整った顔。
いつもあそこで何してるんだろう。
そんな風に気になり出してから2ヶ月が過ぎた。
「おーい松本〜よそ見すんなよ〜」
「は、はいっ」
明日もまたあの人の姿が見れますように。
さっきまで重かった俺の足取り。
それがあの人を見ただけで、不思議なほどに軽くなるんだ。