rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第34章 wrong step on the stairs8
「名無し!……ぁあ?おまえ……」
「!!……なに…、ッ……あ…」
「……ナニじゃねえよ…声が小っせえんだよ…おまえは」
「っ……あれは…別にそういう意味じゃ…」
「じゃあどういう意味だ?オレは聞こえたぜ?……待ってるっつったよな?」
「ッ……」
シャワーを出して、それと共にいっそ色々流してしまいたい。
が、早くもシルバーはそれをさせてくれなかった。
多分、彼はだいぶとせっかちな人間なのだと、こういうときにつくづく思う。
体感でも、現実時間でも、おそらく一分もかからず名無しを追いかけて浴室に来たシルバーは、何とも言えない表情でその一室に片脚を踏み込んだ。
喩え難い顔をしていると名無しが感じたのは、どちらかといえばそう捉えたかったからに他ならない。
向き合うことを半ば放棄した彼女にとって、シルバーの言動ひとつひとつが、今はとても恐ろしく思えた。
心の隙をついてくるに違いない……鍵を抉じ開けられる……深入りされる。
そう確信していたから。