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rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第24章 nothing in return



予定が狂い、帰れない日もよくあった。
まあ予定というよりは、この場合の意味はシルバーの気分次第だ。
いつもの如く帰る直前で呼び止められて再び発情されれば、それが夜の出来事ならば、殆どが翌朝まで一緒だった。
獰猛な生きもののように迫られて、夜じゅう啼かされ続けて気が付けば外は明るかった、なんてことも、もう何度あっただろうか。

危機感はあっても帰れない日に戸惑いが薄れ、シルバーの腕に頬を摺り寄せる愚かな自分を責めた日も、きっと手の指の数だけでは足りなかった。


「……ん――、…」


帰れない日もよくあった。
が、それと同時に名無しには、帰らなければならない日も少なくなかった。

彼女が今まさに目の当たりにしていたのはその帰らなければならない日のこと……。
部屋に到着時、真面目にシルバーに話を通した結果無事に承諾を得られて安堵し、いつものように抱かれシャワーを浴びる……そして今は帰り支度を済ませていたところだった。

いつになく真面目だったのは友人との約束があった為なのだけれど、それはただの遊びの約束ではなく、記念日だから帰して欲しいと、名無しは切に訴えていた。
要は大事な友人の誕生日を祝うという名目だ。

その一言を口にするのも恥ずかしかったけれど、意外にも、シルバーは名無しの懇願を嘲笑も無下にすることもなかった。
同じ立場になってものを考えたのだろうか……それとも経験があったからだろうか。

日付が変わる前に友人の家に向かうため、間に合うようにシルバーの部屋を出ようとしていた名無しは、大切な友人を想いつつも、一度は眠りについている彼の居るベッドの方へと視線を向けた矛盾に気付くことのないまま、いよいよ玄関の外へと出て行った。

外はまだまだ冷え込みの厳しい、とある月は中旬の話だった。


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