rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第23章 sperm shower
頭に血の上ったシルバーの表情というのは、いつも、それはそれは怒りに満ちていた。
腹立たしいことがあったときや試合の最中、或いは相手プレイヤーに切れたとき……理由はまあ様々ある。
が、今の彼はといえばそうではなく、どちらかといえばその表情は無に近かった。
確かに怒ってはいたのだけれど、ただ怒りに身を任せるだけではない狡猾さを従え、起伏の変化を精密なものへと昇華させていたのだ。
冷静さを欠かさないよう心がけていた、とでも言おうか……身体の支配はもとより、シルバーの言葉のひとつひとつにも名無しは痺れを感じ、その場から逃げあぐねていた。
「い、や……んむ!」
「ハッ……ちょうどまた元気が戻ってきた頃だったしな…きっちり咥えて、ヌイてくれよ?」
怒鳴り散らして怯えさせるだけが相手を統べることに繋がるとは限らない。
それをシルバーは回を重ねるごとに学んでいた。
多少、複数でベッドを揺らした際に耳にした、ナッシュの手口を参考にしていたのは彼だけが知る事実。
ナッシュの前で乗り気でなかった女が従順になってゆく様を横目に、納得いくものを感じたがゆえのことだった。
「……」
同じようにシルバーは名無しにそれを試し、彼女の膝をその場で折らせ、中腰で立つよう強要する。
自分はベルトを解き、服と下着をずり下ろすだけだ。
胸のなかでだけ思う……嫉妬に駆られた名無しに抱く愛情を甘い鞭に持ち替え、心を乗っ取る。
苛立ちはむしろ、彼女の方が大きいかもしれない。
信じてもらえないことよりも、なんとか信じようとして悔しがっている名無しのもどかしそうな表情に、シルバーはまるで魂から揺さぶられていた。
本気になっていたのだ……いつだってその綺麗な髪を自身の手で乾かしてやりたいと思うのも、もはや自然だった。