rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第23章 sperm shower
「っ……離…」
「離すかよ……おまえ…、また……」
「!…や……」
生活感のあまりないキッチンは意外に片されていた。
前を通る度にいつも感じていた寒さは、おそらく使用率が低かったからだろう。
時々シンクのなかに置かれた複数のカップや、リップの付いたグラスがあったことを思い出すと、名無しはシルバーに手を取られた危機感よりも先に、焦燥感を覚えていた。
手首を掴まれた痛みさえ、気にならなかったほどに……。
「あーあー……綺麗にしてやったんだからよォ…あんま暴れんな。乱れちまうだろ?」
「……」
「……やっぱな。…また妬いてんのか?ハァ~……疑われたもんだぜオレも」
「っ……む…、ん!!」
「そうだよなァ……疑うよな?ハッ……あーーかわいいヤツ」
焦燥が生み出すのはろくなものではなかった。
無駄に緊張だってするし、必要のない汗を掻き、精神汚染にも見舞われる。
特にシルバーと居る時、彼の部屋で孕ませるべき感情ではないだろう。
シャワーのあと、濡れ髪のまま下着を付け、すぐ服にも着替えたのはさっさと帰る為だった。
強まったり弱まったりの意思のなか承諾したドライヤーも、結局は激しく後悔した。
振り向かされて無理やり口付けられ、嘲笑気味にこちらの疑念に対し、シルバーは潔白を訴えてくる。
見下ろされながら丸め込まれようとしていることが伝わって、名無しは意地を張る以外に上手くとるべき言動を見つけられず、語気を強めながら彼を睨み付けた。