rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「十分すぎるほど楽しめた……流石にここまでとは思わなかったぜ…?名無し」
「ッ……?!ん……ッ!チュ……、ぁ…」
「ん――……分かるよなァ?」
「!」
軽々と一瞬横抱きにされた名無しは、照れを見せ視線を泳がせる。
大胆なことを言ってしまったという自覚も相まって、この状況に羞恥心が押し寄せていた。
が、その横抱きは一瞬のことであり、シルバーは抱擁を解いたと同時、名無しにベッドで膝をつくよう指示を出した。
彼女の戸惑いなど余所に……当のシルバーはというと、今度は自分がベッドに背を付け、仰向けになってその巨体を寝そべらせた。
「…っ……ん…!!あ…、ん…ッ――」
「焦らされてた方がまだマシだったって思わせてやるよ――ん……」
戸惑うのも当然だろう。
シルバーは、本来ベッドの上で向く頭の位置を真逆にして横になっていた。
名無しが持つ願いのすべてを叶えるため、彼が名無しに四つん這いを要求したのは、自分と向きを違わせたものだった。
それも、最初から跨らせはせずに……。
名無しの方からシルバーを覗き込むようにさせると、まずは改まって、キスという振り出しから彼は迫った。
「ん……ちゅ――ッ」
口吸いが心地好いと開き直り、ようやく名無しは潔さや素直さを自覚しつつあった。
そんな彼女にとって、既にキスだけでは足りないと感じる身体にならされていたのは周知だ。
その上での振り出しとはなんて仕打ちだろう……名無しのなかで、また沸々と欲望が溢れる。
シルバーは、下から名無しの頭を両手で触れ掴み、逃げないように強く、けれど優しく押さえ込むと、巧みに唾液を共有し続けあった。
長い長いキスで焦らす事は偶然か、或いは策のうちか……より深いぬかるみに迷わせながら、一切の逃げ道を掻き消してゆく。
唇が離れ、やがて口吸いをいったん途切れさせると、シルバーが次いで掴んだのは彼女の両肩だった。