rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第20章 in the maze
「離…し……ッ」
「チッ……だから…、いつまでその絶望したカオでいるつもりだよ」
「!…ぁ……」
「一人で行けねえなら、オレが連れて行ってやるよ。その場合、もれなくオレとシルバーで夜通しまわしてやるけどな」
「っ…、……」
「まあ……あいつはもう嫌がるだろうけどな。分かったら行けよ、クソが」
「…ッ……」
ナッシュは、その大きな自身の手のひらに名無しを閉じこめつつ、同時にどこか掌握でもしているかのような気持ちでいた。
あまりに思惑どおりに転がってくれるものだから、目を細めて笑い過ぎないようにするのにもなかなか必死だった。
バカ笑いのひとつでも零してしまえば、ある意味この場は台無しになると思ったのだ。
近付いて押し迫り、踵のヒールでコンクリートの地面がじりじりと鳴る音が、やけに緊迫とした雰囲気を漂わせる。
彼女の顔を、骨太の手指で掴んだ瞬間の怯えた表情は傑作だった。